第29話 夜の馬車の中にて
───そして皇族主催のパーティーはお開きとなり、時刻は夜の10時。宮殿の出入り口前では招待客の人達が自家用馬車に乗り込み、次々と帰路につくのである。
「親友よ、飲んでいるかぁ〜〜〜い?」
ルーファス皇太子は皇族用馬車の前にて、お見送りで手を振る。シャンパンをガブガブと飲んだ為か、足元をフラフラさせて酷く酔っ払っている。
「ルーファス様、足元が危ないでございます」
老執事のセレスタンが両手で押さえ、必死に介抱する。ちなみに彼は皇太子が小さい頃からお世話しているベテランである。白髪交じりの整った頭髪に容姿は70代前半、身長はスラッとした180センチのナイスミドルの男性執事だ。名はセレスタン・セイジ。
「アディオス、我が愛しの親友よっ!!夜歩く時は背中とお尻に気を付けたまえっ!!」
そう言って、親友を気に掛けるルーファス。そしてセレスタンに馬車に放り込まれるのである。
「ケツは余計だっての………お前、飲み過ぎだぞ」
親友の悪酔いに笑うレオナルド。あいつはお酒は好きで飲むが、酔うと人に絡む癖があるのが難点だ。
★★★★★★
自家用馬車に乗り、レオナルドはノースゲイルの町まで馬車を走らせる。帝都から町までの時間は2時間、帰って来たら深夜0時を回る。
───最近、帝国内で君の事をよからぬ考えを持った連中がいる。気を付けたまえ。
「まったくアイツ、ガラにも無いことを………」
レオナルドは馬車の椅子に背中を伸ばし、リラックス。アイツが社交パーティーを開いた目的は俺の嫁探しだと言っていたが、それは表向きだ。裏向きでは自身に対してよからぬ考えを持った貴族派の連中をあぶり出すのが目的だ。まずは俺が、皇族主催のパーティーに参加し、その中にいる他の連中に自身の存在をアピールさせる。
ルーファスとの会話の後、会場の中で他の連中と適当にグラスを交わし、他愛の無い会話に華を咲かせていた………。話の内容は趣味とか、結婚や各領地における政策の方針など。
(この俺が、共産主義だと貶すのか………。まったく、幼稚な連中だな………)
貴族派の極端な考えに、ため息を吐くレオナルド。
───パーティー会場にいた連中、彼らとは微笑みを浮かべながら楽しい会話に華を咲かせていた。もちろん、自身に言い寄ってくる複数の女性の姿もチラホラいる。おそらく婚約の為のアプローチであり、自身を妾にして一族を子孫存続させるのが目的だろう。
しかし、本当は自身を領主から引き下ろすのが目的と見える。どいつもこいつもニコニコした仮面を被った魔物に見える。




