第103話 抱き合う2人
───場所は、屋敷の外にある丘の下。
夜空に広がる雲で隠れた月、夜闇に紛れ、木々が生い茂った広地にて、レオナルド率いる帝国騎士隊は共和国系の武装グループせん滅の為、この場所を作戦地点にしていた。
「ソフィア…………大丈夫だろうか?」
レオナルドは屋敷を眺め、ソフィアの無事を祈っていた。
「レオナルド…………らしくないぞ、彼女ならきっちり大丈夫だ」
ルーファス皇太子は肩を叩き、レオナルドに言い聞かせる。
「しかしな…………」
腕を組み、そして戦場と化した屋敷を眺めるレオナルド。ハイアームズ公爵の陰謀を阻止する作戦の為に、ソフィアを敵グループの拠点に、ミランダに頼んで連行させたが、彼女の事が心配だ。
「信じるんだ、有能なミランダが付いている…………」
ルーファスは言った。すると作戦地点に駆け付け、騎士隊長は敬礼する。
「申し上げます、敵の武装グループせん滅を完了しましたっ」
「屋敷に捕らえられている人はいないか?そこに、青い髪の女の子がいなかったか?」
レオナルドは尋ねる。
「それが…………牢屋を見た所、誰もいませんでした」
レオナルドの言葉に、騎士隊長は申し訳なく報告する。
「何だと?」
騎士隊長の報告に、レオナルドは思わず声を張り上げ、額から冷汗を滴らせる。考えられる可能性はアレか、既に共和国に渡ってしまった…………。
「もう一度、屋敷の中を捜索しろ」と、ルーファスは騎士隊長に命令する。そして騎士隊長は「イエス・マイ・プリンス」と、敬礼し、立ち去る。
「ソフィア…………」
イスに腰掛け、両手で頭を抱えるレオナルド。
「まだ分からないだろ?しっかりするんだ」
イスに腰掛け、落ち込むレオナルドにルーファスは言った。するとレオナルドは言う。
「俺が…………奴らを甘く見ていた。もしかしたら共和国に…………」
「あの…………レオナルド?」
「何だ、耳がおかしくなったか?」
幻聴だと思ったのか、耳をほじくるレオナルド。
「レオナルドっ」
ソフィアの声に、レオナルドは声がする方向に視線を向ける。
「アハハハハハ…………その、ただいま」
そこには顔を赤くし、孤児院の子供達とスラム地区の大人達の中から姿を出し、軽く手を振るソフィア。先ほど屋敷の裏口から抜け出してきたソフィア達が、作戦地点に到着したのだ。
「ただいま、戻りました」
ミランダは頭を下げる。
レオナルドは思わずイスから立ち上がり、ソフィアに駆け走る。
「ソフィアっ!!」
ソフィアの無事を知り、他の人達がいても目も暮れず、思わず彼は思い切り抱きついた。
ほえ~~~。と、子供達は抱き合う2人を眺める。
「子供にはまだ早いよ、いわゆる大人のスキンシップだ」と、ルーファス皇太子は両手を被せ、子供達の瞳を隠す。
「これ、遅くなったけどプレゼント…………」
そして、チューリップを刺繍にしたハンカチを渡すソフィア。
「これは?」
「苦労したんだよ、裁縫の作法で、ヒラリーさんと一緒に作ったんだ。アナタがチューリップが好きだから、それを刺繍にしてハンカチにしたんだよ」
ソフィアは言った。初めて作った後、落として、それをミランダに拾われて、このタイミングで渡してきた。まるでこのタイミングを図っていたかのように…………手渡してきたからミランダは怖い。
「君と言う奴は…………」
ソフィアの頭を撫でるレオナルド。




