禁じられた…
もう12月になってしまった。
今年も残すところ一か月弱、せめて最後の一か月くらいは自慰行為は控えよう。
というのが私の細やかな目標だが三分前にバースティングてしまった。
これはいけない。
私はモアバースティングしない為に入り口を瞬間接着剤で固める事にした。
これでもう大丈夫。
だが私という人間は自堕落な性分なので暴走する性欲をコントロールする自信は無かった。
こうしている間にも棚に置かれた不二家のマスコットキャラクターを見ているだけでムズムズしている。
あの舌が良くない。
あの舌を使って丁寧に塗装してもらったら。
私は…、私は…ッッ‼
私は瞬間接着剤とセットになっている接着剤を溶かす液体を使ってしまった。
接着という拘束具から解放され凶悪な本性を見せる私の88。
そしてプラモデルのランナーを切った時に出来る凸凹をトレーシングぺーパーで擦るような動作をしてから、床の上を木工用ボンドみたいな液体だらけにしてしまった。
私のパトスの化身である例の液体には木工用ボンドは鼻をつくような異臭と一定時間が経過すると凝固するという共通点があった。
何という自堕落、言った矢先からコレか。
私は反省しながら液体を処分する。
ああ、臭い。
こんな臭い物を私は楽園の中に溜め込んでいたのか。
十分後、私は世の儚さを感じながらうつ伏せになっていた。
その頃には憤りも収まり、世俗の妄念とは無縁な隠者の如き心地だった。
この世に生まれた事に意味があるなら私の命にどんな意味があるのか。
そう考えていると、ふと私の頭に浮かんできた物はやはり楽園の事である。
紀元前より人は常に楽園という空想の事物に心を奪われていた。
善悪関係無く全てが許されるという楽園。
そこではきっと自慰行為ばかりしていると馬鹿になる。
また自慰行為はハゲの原因といった事実無根のゴシップに惑わされる事はないだろう。
ああ、悲しきかな。この世に楽園は無いのだ。
せめて妄想の中でも私は救われたい。
そう思うや否や私はズボンを下ろし、竿の摩擦係数の測定をする。
一億二千万と一回、一億二千万と二回、ついに私は有史以来初の領域に達した。
私は涙と汗と米の研ぎ汁を煮詰めた液体に酷似した液体を同時に発する。
今確かに見えた。
シュワルツェネッガーが、スタローンが、ヴァンダムが、ドラえもんが、ガチャピンが一つのリングで戦っている。
勝ち残るのは誰だ…ッ‼
おおっと⁉
ここで猪木の乱入、猪木強い猪木強い猪木強い…スター軍団瞬殺だ。
そしてぇぇ最後の勝者は…人類の絶対王者ふじわらしのぶ様だあああああッ‼‼
「うおおおッ‼俺はどんな時でも誰の挑戦でも受け付けるぜ‼腕に覚えのあるヤツはかかってこい‼」
しのぶ!
しのぶ!
しのぶ!
決して止まらない勇者しのぶコール!
その日、ふじわらしのぶは伝説となった。
この世に神は、楽園は存在したのだ。
私はトイレの中に爆散した米の研ぎ汁っぽい液体を水で濡らした雑巾で拭き取る。
もう誰にも誑かされる事は無い。
この部屋に刻み込まれた臭いが消えない限り、私は私の分身たちの発射寸前に垣間見た楽園の記憶を思い出すことだろう。
多分私の家族もこの個室に入る度に私が自分自身と戦い、そして勝利した事に気がつくはずだ。
私はトイレにファブリーズを散布してオナニーの痕跡を消した。
是で良し。明けない夜はない。
だけど忘れないでくれ。
明日になったからといって問題が自然に解決してる事だって無いんだ‼