8、本っていい匂いだよね
スンスン。
紙の匂い、というより私はこれを文字の匂いと呼んでいる。
「ふふっ」
おっと、いけないいけない。
1人で本の匂い吸って笑っているなんて見られたらやばいやつ認定されてしまう。
でも読む前にその本の匂いを嗅いでしまうのが前世からのクセでなかなかこれが抜けないんだよね。
私は今図書室に来ている。
侯爵家の図書室はなかなかと広い。なんでも亡くなったお母様が体弱かった為にお父様がわざわざ作ったとか…。
ちゃんとそこには愛があったようで良かったよ。
「あっ、お嬢様!こんな所にいらっしゃったのですね、もう〜」
サリナが少し息を切らして顔を覗かせる。
おや、見つかってしまった。
「えへへっ」
そうなのだ。本を読む時部屋の隅や窓に座り込んで読むのが好きなんだよね。
椅子とテーブルって何故か落ち着かない。
「お嬢様…ドレスがシワになってしまいます」
「はぁーーい」
パンパンッと軽くドレスの裾を叩いて立ち上がる。
「それと、お嬢様。そろそろ来月のパーティーで着るドレスをお選びになりませんと仕立てるのに間に合わなくなってしまいます!」
「あーー、言ってなかったっけ?パーティーは開かないからドレスもいらないの」
しーーん。
え、無視?
無視っすか、この流れで?
メルナが後ろを振り返りと同時にトサッとサリナの手から本がすり落ちた。
「ちょっと!本は大切に扱いなーー」
「どどどど、どういうことですかお嬢様!」
うるさっ、てか近い近いっ。
「どういうってか、必要無いかなって思っただけよ。はい、この話は終わり!」
そう言って本をぎゅっと両手抱え、そのまま図書室を後にしたメルナをサリナはただ口を開けて立ち呆けてしまったのであった。




