2、うん…あなたのせいじゃないよー
「お嬢様っ!メルナお嬢様…っ!この度は本当に申し訳ございませんでしたっ。あろう事が主人を階段から突き落とすなんてぇぇぇ。でも、わざとでは無かったのですっ」
ぐずぐずに泣きながら謝る綺麗なブラウンの髪の毛の女性。
…メルナ。
それが私の名前なのね。
ズキッーー。
「っっっ!」
名前に反応するかのように頭が激痛が走った。
そして、途端に流れてくる大量の記憶。
なんだこれは…。
「…お、お父様…」
私が漏らした小さな呟きに、周りを取り囲んでいた大人たち…
ううん、我が家の使用人たちがビクッと反応した。
そして、1人の男性が私に声をかけた。
「お嬢様。申し訳ございません。旦那様にもお嬢様が階段から落ちたことをお伝えしたのですが…。仕事が忙しいとのことで」
静かにそう言って頭を伏せた。
長い沈黙が続く。
ふぅと息を漏らし、私は静かに切り出す。
「…そう、分かったわ。とりあえず1人にしてもらえるかな。それとあなた」
私はその男にそう伝えた後にまだ土下座している女性に目をやる。
ビクッと跳ねる肩。
ふっ、どれだけ嫌われてるのよメルナ。
「あーー…その。今回は悪かったわね。あなたは悪くないわ。私がお父様の仕事場に行きたいとごねた結果勝手に階段から落ちただけだもの。気にしないで」
「へっ?」
ガバッと顔を上げる女性。
ん?…赤くなってる。
私はゆっくり彼女の前に行き、しゃがんだ。
「…痛かったわよね?ひっかいてごめんなさい」
メルナはそう言うと眉をはの字にして、若いメイドの頬に手を当てた。
「っっ!!はうわぁっ!?」
さっきから「へ」とか、「はうわ」って、日本語話しなさいよ…ふふっ。
まぁ、メルナ可愛いからめれちゃう気持ちわかるけどねぇー。
顔を赤くした彼女に構わずに、くるっと体の向きを変えて先程の男性に話しかけた。
「ねぇ、部屋を出た後彼女の頬も手当てしてあげて」
メルナはそう言ったかと思うと、話をもう終わったのだと、スタスタ歩きだしベットに座りバサッと布団を被った。