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国王陛下との謁見……?

 私は……何をしているのだろう。




 今日の予定は風邪を引いて家でゆっくりしているはずだったのに、王族の家紋が入った馬車が私達を迎えに来たのだ。


 そのため屋敷は大騒ぎ。


 主に使用人が。


 肝心のお父様とお母様は「どうしようか」なんて呑気な会話をしていた。


 まぁ、一言で言えば他人事。


 言葉の意味を深くは考えたくないけど、どうやって追い返そうか、私にはそう聞こえた。


 だって目が笑ってないんだもん。


 わざわざ使者が来るってことはお父様の考えが見抜かれていたってことだ。


 ゲームではそんな描写は描かれていないけどお父様はイーゼル国王陛下と知り合いかもしれない。


 公爵家当主なら何かと王宮に呼び出されることもあるだろうし、不思議はないのか。


「お嬢様からも何とか言ってください」


 マリーが泣きながらしがみついてきた。


 うちは公爵家でありながら雇う者と雇われる者という概念はあまりなく大家族に近い。


 食事をとる際にも毎回席につくように促すも、流石にその一線は越えられないと首を縦に振ることはない。


 それを強要してしまったら他の貴族と同類になってしまう。


 次は気が向いたら……と毎回諦める。


 わかっている。彼らは従であり、私達は主。


 その事実だけが変わらず覆ることもないのだ。悲しいことに。


 いくら王族が嫌いでも迎えまで来てしまった以上は無視できない。


 そんなことすれば根も葉もない噂が飛び交う。


 これを期にファーラン家を良く思わない貴族同士が手を組むかもしれない。


 多くの貴族はお父様を嫌っている。イケメンでやり手なお父様が妬まれるのは仕方ないとして、逆恨みされてるのはちょっと腹立つ。


 どうにか失脚させようと時期を伺っている者もいると聞く。


 そうなれば私達だけじゃない。

 公爵領の領民にまで苦労をかける。


 コーヒーを飲みきったお父様は重たい腰を上げた。


 それから時間をかけて支度をして、馬車へと乗り込んだ。




 そして、こんな状況になってしまった。




 呼び出しだからてっきり王座の間で昨日のことを責められるかと覚悟していたのに、私とお父様はイーゼル国王陛下とテーブルを囲んでお茶をしている。


 ──友達か!!


 と、思わず心の中でツッコんだ。


 ほんと何してるんだろ。


 あんなバカ息子……ワガママ王子の親だからといって傲慢ではなかった。


 むしろ優しい。

 そして私のタイプでもあるイケおじ。

 カッコ良すぎる。

 お父様と国王陛下。

 ダブルイケおじと同じ空間にいるなんて幸せすぎる。


 この世界は天国ですか。なるほど。だから死んだ私はここにいるのね。


「レックス嬢。昨日は息子が失礼したね」

「っ……!!」


 イケボ!!

 外見も声もどストライク。


 私がうっとりしている間にお父様は陛下に昨日のことを包み隠さずに話した。


 迷惑しているとも。


 その件はハティからも聞いていたけど、どうにも内容が食い違っているらしい。


 自分に都合の良いように話したな。あのバカ王子。


 それなのに陛下は息子よりもお父様の言葉を信じた。


 そして…………全ての非はハティにあると言ってくれた。


 マジかこの人。


 全てにおいて完璧じゃないですか。


 真のイケメンは中身までイケメンですか。

 辞書に新しい単語を付け加えてくれないかな。

 イケメンとは、外見だけではないと。


「レックス嬢?どうしたのかな?もしかして茶菓子が口に合わなかったかい?」

「い、いえ!そういうわけじゃ」

「私も娘も体調が悪いんですよ。妻も高熱を出してしまい今頃、一人でうなされていることでしょう」


 わざとらく咳き込んで早く帰りたいアピールをする。


 妻を一人寂しく残して来たかと思うと、胸が張り裂けそうだと語るお父様は、さっさと帰らせろと念を送る。


 その態度は不敬では?


 出されたものには一切手をつけないのも失礼に値する。


 イーゼル陛下はそんなこと微塵も気にする様子はない。


「レックス嬢は息子はお気に召さなかったかい?」

「陛下。娘は……」

「君には聞いていない」

「では何を言っても世間話として聞き流してくださいますか?それを約束して頂かないと娘には一言も喋らせられません」

「私の胸の内に留めておこう」


 好きでないとハッキリ言ってしまう?


 問題にはしないと約束してくれたし、外部に漏れることもない。


 婚約というフラグを折れるチャンス。


 不安要素は潰しておかないと。


 生きるために。


「そうですね。殿下が私のどこに惚れたかは存じ上げませんが花の一つも持たずに朝から家に押し掛けては、自分は王族だからと父親である陛下の了承もなしに婚約を強要してくるお方は、例え次期国王陛下であってもお断りです」

「息子は一体、何をしたらそこまで言われるんだ……?」


 頭を抱えてうなだれた。


 悩む姿もキュンとする。


 私の第一印象は最悪だろう。


 ここまで冷たく言い放つ令嬢に好感を持ってくれるわけがない。


 ましてや息子に対して言ったのだ。


 悪意があると捉えられても仕方がない。実際あるけどね。


 一番のお気に入りキャラと会えて冷静でいられた自分を褒めてあげたいけど、人としての常識を持ち合わせていないことにガッカリした。


 これでも中身もは成人した大人。そういうとこには厳しい目でチェックを入れさせてもらう。


「ですが、殿下がちゃんとした常識をお持ちになられていたとしても、私のような日陰で生きているような地味な女では不釣り合いです」


 ここまで自分を下げれば大丈夫。


 言わされた感はない。


 親バカであるお父様が、断わるためとはいえ娘にそんなことを言わせるような人でないと知って……いて欲しい。


 予想外にも反応して見せたのはお父様だった。


 勢いよく立ち上がり陛下を睨みつけながら


「金輪際、私の娘をこんな所に呼ぶのはご遠慮願いたい」


 人でも殺しそうな目つき。


 私の言ったことで怒るとこあった?


「またおいで」


 ズキューン!!


 そんなお父様とは真逆に超犯罪級の笑顔で手を振ってくれた。


 心臓を射抜いた矢は刺さったまま抜けない。


 王宮なんて来たくないのに、陛下に会いに通いたくなる。


 なにこのイケメン!!


 私を惚れさそうとしてる!?

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