騎士科
国のトップが、国の偉い方々が、小娘の話を真剣に聞いている。
クロックのこともあり私は騎士科、というのを作ってみては提案した。
正義は人によって違う。自分と意見が合わなければ悪だとみなす人もいる。誰とは言わないけど。
そんなときに家柄や権力で一方的に相手を抑えつけるのは間違っている。
騎士科設立は二度と、そういった問題を起こさないようにするため。騎士科と名を掲げるわけで、将来騎士になりたい生徒が通う。
希望者は男女問わない。女性の中には剣を持ったり、馬で駆けたりしたい人だっている。
淑女はお淑やかで守ってあげたくなる可憐さとか弱さが必須なのかもしれない。
でもそれは女性に生まれただけで、本当にやりたいことを我慢する理由にはならないはず。
騎士科はクロックのようなバカを出さないのとは別に、夢追う女性を応援する願いも込められている。
「講師はどうするのかな。まさか王宮騎士に頼むわにはいかんだろう」
「はい。それでアラン団長にお願いがあります。オーシャン王国の団長を数名、お呼び頂けませんか」
「その権限は私にはありません」
「じゃあ僕が陛下にお願いの手紙を書いておくよ。アランくんは賢い鳥を飼ってたよね?」
ここに呼べと催促している。
言い出しっぺが私だから何としてでも早急に許可を取りたいんだ。
親バカだからなせる技。
「誰をお呼びになるのですか」
「もちろんラミアです」
講師が女性団長なら女子生徒も安心するだろうし目標にもなる。諦めずに頑張れば夢は実現すると。
「ラファイルもお呼びしましょう。アイツは教えるのが上手いですから」
「アラン団長がそう言うなら、きっとそうなんでしょうね」
「(全く、このお嬢様は。疑うこともしないで)」
騎士科が出来るのは早くても来年。今から募集をかけたらひとクラスぐらいは集まるかな。
来る者は拒まない。クロックが希望するなら学科を移動可能。
「では聖光学園の騎士科は夏休み明けの二学期からということで」
「いくら何でも早すぎでは!?」
「ケエイがレックス嬢なら必ずこの案を出すと確信していてね。設立を始めていたんだ。生徒は夏休みいっぱいまで募集する」
仕事の出来るお父様素敵すぎる。感激のあまり泣きそうになった。
学園は二学期から普通科と騎士科。二つの学科に分かれることとなった。
ただ騎士科は騎士道を重んじるため、もし何かをやからした場合、厳しい処罰が与えられる。
責任と覚悟を背負えない者に、正義を語る資格はない。
トントン拍子に話が進む。これならもう一つの提案も受け入れられるのでは?
言っちゃっていいかな。いいよね!今がチャンスなんだ。
「剣術大会を開くのはどうでしょう」
あぁー……言ってしまった。
欲まみれの願望を悟られないように設立の記念にと付け加えて。一般的にはパーティーのほうが主流だろうけど私が嫌だ。
あとアラン団長の軍服を見たい!
学園長として正装はスーツだけど、騎士ならば軍服が正装。何もおかしなことはない。
「いいと思うよ。そうだ。優勝者にはアランくんと戦う権利が与えられるってのはどうかな」
「自分よりも弱い者に手加減するのは難しいのでお断りさせて頂きます」
飛んできた鳥に手紙を預けた。あの子可愛いな。名前とかあるのかな。後で聞いてみよ。
「とても面白い話があるんだけど聞くかい?」
飲むわけでもないのにカップを取り、優雅に回しては色味を楽しむ。
不敵なお父様。
全員が嫌な予感を予感した。
緊張で汗が流れる。
「今この国に貿易船が停まっているんだ。次は隣国に行くらしい」
まさか……。
人脈が広く国貿易に口を挟めるのお父様は当然、貿易商の人とも知り合い。
断るならオーシャン王国への一切の貿易をストップさせる。
口にしたわけではないけど、態度がそう物語っていた。
そんなことになれば国は大打撃を受ける。
「お受け致します」
「この大会は祝いの場でもある。嫌なら無理に受けてくれなくてもいい」
「いえ。喜んで優勝者と手合わせをさせて頂きます」
不満しかないだろうに。
お父様のせいで胃痛に悩まされてる人が増えている。
その原因を作っているのは私でもあり、罪悪感が重くのしかかってきた。




