一人目
建国祭は日本のお祭りと違って大規模で華やかさがある。
空から降り注ぐ花は建国祭のためだけに作られた魔道具を使用。
忍ぶつもりのない、国民に愛されているルーナは囲まれ前に進めない。
いち早くこの状況を察したシェリーのおかげで私だけはあの肉の壁に挟まれずに済んだ。
「さ、楽しみましょ」
「ルーナは!?」
もみくちゃにされてる。
シェリーはルーナの護衛で来てるんじゃないんだ。助けようとさえしない。
「ちょっと。そこの人の皮を被った冷酷悪魔。王女様が困ってるわよ」
「お前の仕事だろうが」
「ふーーーん。じゃあレックスちゃんと一緒にいてくれる?」
「……」
無言で行くのやめて。
──私が思ってる以上に私って嫌われてる?
今のうちに、とシェリーは私の手を引いた。
団長ともなれば目立つのは当然ですれ違う人全員が声をかけてくる。
お堅い騎士団長ではなく友達のように。
「レックスちゃんはこの中だと、どれが欲しい?」
装飾品店。お手頃価格で可愛いのがいっぱい。
ワンポイントオシャレみたいな小物。
ロフィーナ国と比べてここのは色鮮やか。
「そのブローチがいいの?」
「そうじゃなくて。どれも綺麗だなって」
「何言ってるのよ。レックスちゃんもとびっきり綺麗で可愛いじゃないの」
全身鏡に映るのは地味とは程遠く、見とれてしまう美人な私。
化粧一つでこんなに変わる。一種の魔法。
私にこんな腕はなく、同じようにやったところで、こんな風になれない。
マリーなら化粧ぐらいお手の物だろうけど教えて欲しいなんて言えば大騒ぎする。
独学で勉強するにしてもバレたら………やっぱり大騒ぎ。
「そうだレックスちゃん。このヘアピンお揃いにしない?」
四つ葉をモチーフに派手すぎず、この魔法が解けて地味な私に戻っても似合う一品。
オシャレ団長はセンスが良い。
買ったヘアピンはすぐ付けてくれた。
「うん。可愛い」
「あ、あり…がと」
またまた気付かなったけど完全に陽が落ちた。
国中の電気が一斉に消え、同時に花火が打ち上がる。
祭りの最後に上がるんじゃなかったの。
シェリーがわざと嘘をついたとしか思えない。
付けてくれたピンにそっと口付けを落とすシェリーの行動は、あるイベントの前触れ。
絶対にそうだとは言い切れないけど直感は信じたい。
ここがシェリーの……
「好きよ。レックスちゃん」
告白シーン。
早い早い!!出会って数日ですけど!?
花火の音で聞こえなかったふりをしようにも感情が顔に出まくる。
「ゆっくり考えていいからね」
シェリーは視界に入る騎士を見て「仕事に戻らなくちゃ」と行ってしまった。
せっかく買ってくれたピンも今だけは外したい。直接されたわけじゃないのに熱は引かなかった。
この顔ではルーナとソフラに誤解される。それにアラン団長にも……。
どこか人気のないとこで休もう。冷静になれば落ち着くはず。
シェリーの気持ちは嬉しいけど、まともに受け入れられない。本心ではないかもしれないからだ。
彼らはシナリオを動かすキャラ。この……クソみたいなゲームを成立させるために強制修正が入った可能性も捨てきれない。
私なんかのどこを好きになってくれたのか見当もつかないんだけど。
しかもゲームの特性上。ヒロインはモブをいじめたりする。断罪だってされるかも。
私の意志で動いているんだからいじめとかはないにしても、勘違いや恨みから陥れられるかも。お父様を敵に回す命知らずはいないはずだけど、この世界の仕組みを知っている私が全てを信じきるには難しい。
熱も引いて元に戻りみんなと合流しようと一歩踏み出すと、後ろから薬品の匂いがするハンカチを口元に当てられた。
これって誘拐!?
助けを呼ぼうにも口が塞がれている。薄れゆく意識で聞こえたのは身代金のこと。
なぜかこの人達は私をルーナと勘違いして連れ去った。




