夢の中
その日の夢はハッキリと覚えている。
アラン団長に貰った魔道具を枕の下に入れて眠ると意識を残したまま、私は前世の世界にいた。
私がここにいることは私しか知らない。今の私は幽体ではあるけど幽霊ってわけではないようだ。
死んだとはいえ生まれ変わってるわけだし。
行きたい場所は思い浮かべるだけで移動する。
私が住んでいたアパートは綺麗さっぱり掃除されていた。今はもう誰も住んでいない。
実家では毎日のようにお父さんがアルバムをめくりながら涙を流す。
最後に会ったのはいつだっけ?すっかりやつれて……。
お母さんも気丈に振舞っているものの、一人になると声を殺して泣く。
「ごめん……。ごめんね……!!お父さん!お母さん!」
私の声は伝わらない。それがもどかしくて、私も泣いて泣いて叫んだ。
何度も「ごめんね」と。
親より先に死ぬなんてあってはならないのに。
丸まった背中に抱きついてもすり抜けるばかり。
私は二人の子供で幸せだった。いつだって私のことを考えてくれて……。
私はまだ産んでくれたことに感謝すらしていなかった。
仕事の忙しさから連絡をする暇もなくて。せめて電話して声くらい聞けば良かったな。
胸が張り裂けそうなぐらい痛い。
泣き続けて、目が覚めると現実の私も泣いていた。
夜はまだ明けていない。月明かりが妙に眩しくて、つい目を細める。
よかった。部屋を別々にしてもらっていて。でなければ心配をさせてしまう。
夢でこんなに泣くなんて異常。ルーナの場合、早急に医者を手配しそう。
上半身を起こして指を動かして生きている実感を得た。
そうだ。私は生きている。
薫は死んでレックスとして。
もう一度「ごめんね」と呟いて体を倒すと、また眠りについた。
私は今、多くの人が行き交う交差点でとある物をじっと見ている。
そこには“どきどき!メモリー♡”の続編が発表されていた。
舞台は隣国オーシャン王国。
ヒロインは…………レックス。
──何かの間違いでは?
え、待って。どういこと!?ルーナじゃなくて!?
呆然と立ち尽くしながらも目は説明を追った。
なるほど。アナザーストーリーの次の展開なのか。
あのバカ三人組の誰かに殺されたレックスは実は死んでいなくて、心優しい慈愛に溢れるルーナに助けられたところから物語はスタート。
ゲーム内でも「死んだ」と言葉が使われなかったのはそのためか。
「処刑された」と書いてあったけど、死んだかどうか別。
バットエンドで「○○された」と表記したのは、続編も同時進行で作っていた可能性は高い。
家族も……みんな無事だったんだ。
オーシャン王国前陛下はお父様に大きな借りがあり、処刑されると噂が流れたその日から救うべく尽力してくれていた。
シエル前陛下はヴィザとの話し合いの結果、ファーラン一族並びにその使用人を自国に受け入れてくれる。
ヴィザは唯一、攻略対象の中でレックスを殺さなかった。臆病になってしまったレックスは毒を飲む。それがヴィザ攻略ルートの結末。
私が死んだ後に色々と追加設定されたように感じるのは気のせい?
オーシャン王国の攻略対象はシェリー、オリバー団長、ラファイル団長、ジル、エアル団長。
誰だろエアル団長。騎士寮では見かけなかった。
アラン団長は………違うのか。
ガッカリしているとシークレットキャラが解禁された。それは紛れもなくアラン団長。
ただ攻略対象になるには条件を満たさないといけない。その条件は……。




