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よし。こんなものか。

覚えていることを一通り紙に書き起こし見直してみる。

こうして見るとこのキャラクター、ロクなのがいない。

ストーリーがおかしすぎでしょ。

よくハマってな私。

冷静になって考えてみればあのゲームの絵柄が好みだった。

そこから入って、イケメンキャラに心が癒されていた。

目の保養にはちょうどよかったし、スチル写真も最高だった。

現実には存在しないイケメンはいつしか支えとなった。

癒しは生きていく上で必要不可欠。


だいたい!!


リンはヒロインじゃなくて悪役令嬢じゃないの!?

プレイしてるときも、なんで悪役令嬢でゲームしてるんだろうって思ってた。

やたらとレックスをいじめてたし。



その意味がわかったのは例の婚約発表でだ。

リン・シナーこそがこのゲームのヒロイン。

ハティの本当の婚約者。

タイトルの『どきどき』ってそういう意味か!!

ってツッコんだほど驚いた。

だって説明にはそんなこと書いてなかったもん。

だからてっきりこのゲームは、悪役令嬢をプレイするスタンスなんだと、さほど疑いもしなかった。

昨今では悪役令嬢もブームだからね。

イケメンスチルだけをゲットしたかった私は、ストーリーなんて適当に流していたような。

それでもドキドキしながらプレイをしてた。

いつリンが裁かれるのだろうと。

スカッとするほど派手にやって欲しかったのに、期待を裏切ってハッピーエンドに到達。

頭の中に?が大量に浮かんだ。

罪のないレックスを殺してハッピーエンド?

モヤっとしたけど最後の攻略対象の微笑みスチルに、そんなことどうでもよくなった。

私のバカバカ!!運営にクレーム入れておけばよかった。

このピンチってなんだっけ?

あまり興味のない場面は適当に流すどころか、早送り機能を使ってプレイしてたからな。

確かとんでもないことだったような気がする。

頑張って記憶を辿るもモヤがかかったように思い出せない。

前世のことが蘇っただけでも奇跡だし、その辺は追々ということで。


「レックス?大丈夫かい?」


部屋のドアをノックした直後に、お父様の不安そうな声が聞こえた。

そりゃ心配するよね。

あの後、発狂しながら自分の部屋まで走ったら。

部屋に残された人達のポカン顔が目に浮かぶ。

だってさ。

このままゲームの展開通りに事が運べば私は来年のハティの誕生日(こんやくはっぴょう)に死刑を言い渡される。

それだけじゃない。

例えリンがハティ以外のキャラと結ばれようとも、レックスは断罪される。

私の未来はバッドエンドしかないってこと。

この未来はゲーム内のリンにとってハッピーエンドだった場合。

レックスがハッピーエンドなら死ぬだけ。

バッドエンドなら家族に不名誉な汚名を注がれて家族仲良く見世物にされ国民の前で罵倒されながら首をはねられる。

意味わかんない。

普通は悪役令嬢じゃないの。バッドエンドって。

あ、でもゲーム内ではレックスが悪役令嬢のポジションなのか。

だから殺される。

はは……。何よそれ。

私には逃げ場がないってことじゃない。


「レックス……」


部屋に入ってきたお父様は悲しい顔をしていた。

さっきはわからなかったけど、よく見るとお父様ってイケおじじゃん!!

待って待って。

モロ私のタイプなんだけど!!



「婚約が嫌なのかい?」


優しい口調。

膝をついては私の両手を包み込んだ。


「本当のことを言っていいんだよ。僕はね。王族という血筋しか自慢するものがないあんな王子の元に可愛い娘を嫁がせるなんて反対なんだ」

「……………え?」


サラッととんでもないことを言わなかった?

お父様の顔はニッコリと笑っているのに背筋が凍るほど怖い。

これは……あれだ。

お父様はかなりの親バカ。

どうやらお父様はハティが嫌いなようだ。

理由は先程述べた通り。


「あなた。だから婚約の話なんて断ればいいと言ったのよ」

「お、お母様まで……」


めっちゃ美人!!

動作の一つ一つが美しく、現代でいうところのヤマトナデシコ。

この世界では淑女って言うのかな。

二人が惹かれ合うのも納得。


「レックスの気持ちもあるだろう。あんなバカ王子でも万が一、レックスが好きなら勝手に断れない」

「あら。その言い方は不敬罪に当たるわ。どこで誰が聞いているかわからないのよ」

「そうだね。では屋敷の中ではバカと呼ぶことにしよう」

「いいわね。実際にバカなんだし」

「ふふ。お父様、お母様。それでは失礼ですよ。王子なのですから」

「やっと笑ってくれたね」

「え?」

「さっきからずっと難しい顔をしていたから」

「それは……」


この先に待つ私の未来を嘆いていたから。

こんなにも娘を想ってくれる両親を残して冤罪で死んでしまうなんて心が痛む。

バッドエンド回避にはこの時点で婚約を断ればいいのだろうけど、王族からの申し出を断ればお父様とお母様にも危険が及ぶかもしれない。


あんな……あんなバカ共のせいで国宝級の美男美女が死ぬなんてあってたまるかぁぁーーー!!!!


レックスが引きこもりがちになってからもこの家の人だけは、呆れずに見捨てないでくれた。

優しい家族なんだ。

唯一、“無実”を信じてくれていた。

レックスが良い子に育った最大の要因は親の愛。


「お父様。私、王子とは結婚したくありません」


婚約さえしなければリンにいじめられることはないはず。

そもそもなぜリンはレックスをいじめてたんだっけ?

その理由も言ってた気がするけど思い出せない。

興味ないもん。そんなもの。


「うん。あんな男、レックスに相応しくない。丁重にお断りしよう」


親バカだろうが何だろうが本人に直接、下手なことは言わないよね?

ちゃんと、丁寧にお断りすると信じるしかない。

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