断罪されるのは②
「さ、次はルカさんの番ですよ」
「ま、まだあるのか」
「あら。まさかご自分の家の汚点を暴露されただけで終わるとでも?貴方自身にも罰は受けてもらいます」
「待て。俺が何をした」
「そこから説明しないとダメなんですか?」
やれやれとため息をついた。
なんか性格違くない?もしかして別人?
「ルカ・フィリックスに関して私からも申し上げたいことがあります」
「紳士さん?」
ハティにとって忌まわしい黒髪の彼。
ここに集められているのは学園の生徒(と、その保護者)。
部外者の彼がどうやって入れたのかが疑問。
「君の証言は必要ない」
「フィリックス家如き、我々だけで充分です」
お父様とクリーク黒っ!!あと口悪っ!
私が彼を紳士さんなんて呼んでしまったから怒りに触れてしまった。
ごめんね紳士さん。でも私、貴方の名前を知らないから。
そしてやっぱりお父様の知り合いだったのね。
なぜお父様の知り合いはこうもイケメンだらけなの。
顔面偏差値高すぎ。
身内だけでイケメンパラダイスなら攻略キャラなんていらないじゃん。
紳士さんはお父様の言葉は聞こえないふりをして私の前で膝をつき手を取った。
「レックス嬢。再びお会いできて光栄です。私はシン・サイフォード・オーシャンと申します」
その名前どこかで。
ゲームじゃない。この世界で聞いた。
あれは私が自分の部屋から出るようになった頃。
お父様と誰か男の人が話していた。聞いたことのない声だったし仕事関係の人だと思う。
大人の会話なんて興味なかったから聞き流しちゃったんだよね。
知ってるはずなのに思い出せないこの感じ。 モヤモヤして気持ち悪い〜。
頑張れ私の脳。まだ老化してないと証明しろ。
えーっと、ほら。あの……すぐそこまで出かかっている。
「お兄様!!レックスさんから手を離して下さい!!」
兄……。妹……。
「あっ!!オーシャン王国の……?」
顔が引き攣る。
だってオーシャン家は王族。
そしてルーナはシン様を兄と呼んだ。すなわち王女様。
たかが公爵家令嬢が気安く話をしていい存在ではない。
ましてや平民と思っていたなんて……。
思い出せたのはスッキリしたけど、思い出さないほうが良かったかも。
「発言してもよろしいかな?」
「ど、どうぞ」
立ち上がったシン様はあの日と同じように冷たい目をしながら、ハティが開催した迷惑極まりない非常識のパーティーでの出来事を誰にでもわかりやすく説明した。
ルカが私に何をしたのか。
そのせいで怪我をしたことも。
見てたんじゃん。なのに嘘をついたのはすぐに助けにこなかったから。
もし今日のことが予め予定されていた計画だとしたら、証拠となる材料は一つでも多く欲しい。
利用されたなんて悲観ぶるつもりはない。シン様に助けられたことは事実。
「怪我?そんなわけあるか。だってそいつは」
「普通に歩いていた?君に弱味を見せたくなかったんだろう」
「なんでそんな……。怪我をしてるなら言えば良かったのに」
「自分のこれまでの行動を思い返してみればどうだ。レックス嬢にだけキツく当たり、大して調べてもない過去のことを引っ張りだしては晒し者にする。そんな君の前で強がるのは至極真っ当な判断だ」
「ルカさん。ずっと聞きたかったことがあるんです。レックスさんは貴方に何をしたんですか」
「その女はファーラン家の……」
「レックスさんが何をしたかと聞いたんです。家は関係ありませんよ」
兄妹揃って睨まれているとルカは情けなくも顔を逸らした。
「まさか父親が嫌っているだけで悪だと決めつけて意地悪していたわけではありませんよね?」
「それは……」
残念ながらそうですよー。
典型的親の言いなりのバカ息子。
ルーナの反撃はこれでは終わらない。
入学当時から色んな女子生徒に手を出したツケが回ってきた。
女の子に甘い言葉を囁いては公爵の力で支援するとか、事業に手を貸すとか適当な口約束をした。
彼女達は信じて疑わない。
だってハティの友人が嘘をつくはずがないから。
待てど暮らせど一向に契約書が届かないどころか今年に入ってリンに心を奪われ誰も相手にしなかった。
遊び人の言葉を信じるほうもどうかしてるけど。
「たかが口約束じゃないか。そんなのは無効に決まってる」
「あれ?ルカさん知らないんですか?この国では貴族の言葉は絶対というハティ殿下の思想を。つまりですね。例え口約束だろうとルカさんの口から言われたことならその時点で契約されたことになるんですよ」
「ハティ!!」
うわー。陛下はかなりのご立腹。
そりゃそうでしょ。
耳にタコができるほど同じことを言われているのに学習しないんだもん。
「なら全て我々が面倒を見れば問題ないでしょう」
「そんなこと出来るわけがないだろう」
ハティってここまでバカなの?
これじゃ本当に設定だけの人間じゃん。
普通わかるでしょ、それぐらい。
王族が貴族だけを特別扱いしたら、それこそ本当に取り返しのつかない事態になる。
平民のほうが日々の暮らしが大変なんだ。そっちを救わず貴族だけに手を差し伸べたら完全に対立してしまう。
これがルカのピンチだ。
そしてやっぱりそれを助けるのはレックス。
様々な事業を大成功に導いてきたファーランなら可能なのだ。
陛下もさっきからお父様を見てる。無視してるけど。陛下が口に出してお願いするのは、ギリギリの均衡を壊すのに等しい。
レックスがお願いして初めてお父様は力を貸してくれる。
「お父様。この件は私達が引き継ぎませんか」
「………………………………いいよ」
嫌そう。
私がルカを好きだから助けたいと勘違いしてない?
あんな無礼者を好きになんてならないよ。ちゃらんぽらんで自分の言葉に責任も持てないお子様。
「別に彼の尻拭いをするつもりはないわ。少なくとも彼のせいで予定していた事業や開発が大きく遅れているなら同じ公爵家として手を差し伸べなければ、それこそ落ちぶれてしまう」
これは本音。
多くの貴族はルカの言葉を信じて計画していたことがあるだろうに、今更ながら無理だと告げるには酷だ。
「ま、そういうことなら。ルカ・フィリックスと口約束をした令嬢は後で我が家に手紙を送ってくれ。順番に対処しよう」
理解ある人が父親だと助かるな。
ルカとフィリックス家。こんな簡単に公爵家が落ちるなんて。




