言った覚えはない
教室には戻りづらくルーナと二人で屋上で過ごした。
授業をサボる罪悪感はなく、むしろちょっと楽しい。
ルーナには兄がいるそうだ。しかもつい最近までは仲が悪かったとか。
というのも、ルーナだけが髪色が違うから気味悪がられていたらしい。
親は親でどう接していいかわからずギクシャクした関係が続いていた。
家族なのに腫れ物扱いされるのは寂しい。
「レックスさんのおかげで今はすっごい仲良しなんです」
「何かしたっけ?」
「言ってくれたじゃないですか。私の色は……って」
「あぁー……。え……?何の前触れもなくいきなり言ったの?」
「はい」
キョトンとした。私のほうがキョトンだよ。
可愛い顔してやることえげつないな。
家族のポカン顔が目に浮かぶ。しかもそれを夕食時に言ったみたいなのよね。
私は他人にとやかく言われたと言ったのであって、突然家族を混乱させろとは言ってないわ。
嬉しそうに笑顔を作るルーナに、そんな些細なことはどうでよくなった。
家族で仲良くなれたのであれば何より。
ルーナの家族はルーナが髪色のことで悩んで傷ついていることを知っていた。
仲間外れみたいに落ち込むルーナにどんな言葉をかけていいかわからず自然と亀裂が入ったしまったのだろう。
気味悪がられていたというのもルーナがそう思い込んでいただけで、本当は家族として愛されていたのに。
誰かが勇気を出してそれを飛び越えてしまえば、あとはどうってことない。
家族としての時間を取り戻せる。
「殿下はなぜレックスさんにこだわるんでしょう。権力が欲しいなら他の公女でもいいはずなのに」
「手がかからないから。私は地味で大人しく、やることにいちいち口を出さないと思ってるからじゃない」
「そんな理由で選ぶなんて最低です!女性を何だと思ってるんですか」
「その家の権力を手に入れられる道具」
「仮にも次期国王がそんな……。人形と結婚すればいいのに」
ルーナはハティに人形でも贈ろうかと本気で考えている。
それは流石に止めた。
王子殿下の趣味が人形遊びだなんて根も葉もない噂が国中に広がったら大変だもん。
想像するとかなり面白かった。裏声とか使ってそう。
ご存知の通りハティはバカだ。
心の中に留めおけばいいことを口にしては平民からの支持を下げる。
陛下からも指摘は受けてるはずなのに治らないのは持病とかそういうレベル。
「さてと。そろそろ戻ろうか」
「でも」
「いつまでもサボるわけにはいかないでしょ」
「私は…………絶対に許さない」
「え?何か言った?」
「いいえ」
気のせいだろうか?
一瞬、ルーナの目が鋭くなった。




