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招待状と手紙

 学校から帰るとすぐに交流のあった令嬢達にお茶会の招待状を書いた。


 そんなに人数は多くないため、時間はかからない。


 書き終えておかしなとこがないか見直す。


 クリークにもチェックしてもらい合格をもらう。


 私としてはお父様のお店のお菓子でもてなしたいところだけど生憎、彼女達の口にはあの素晴らしい味が理解できないらしく王都で流行っているお菓子を取り寄せることにした。


 王都のお菓子は物によって甘すぎたりするから、私はあまり好きではない。


 成金や貴族上がりたての人が一番好んでいるのが、単価の高い砂糖を惜しげもなく使って作られたケーキ。


 口の中に残る甘さは地獄。せめてブラックコーヒーのように苦い飲み物を合わせたいのに、バカみたいに甘いケーキに甘い紅茶を合わせるのが貴族なんだとか。


 貴族辞めたい。心の底からそう思う。


 私の好みを把握してくれてるお父様は私の嫌いな物を買ってくることもない。


 いつでも好きな物を食べれられるのは幸せ。


 貴族じゃなくても、お父様とお母様の子供に生まれたことがレックスにとって、そして私にとって奇跡。


 マリーに頼んで招待状を出してもらい、私はもう一人のお方に手紙を書いた。


 お父様とお母様は三週間前から領地に赴いている。


 向こうには優秀な管理人や使用人と同じく期待に応えようとする領民がいることから、どの領地よりも栄えていた。


 仕事を手伝うまではいかずとも、屋敷から外に出ては領民一人一人に声をかけるのが日課。


 お母様も日傘を差しながらも共についてきてくれる。


 領民が病気や怪我をすれば治療費を負担するだけでなく、お金は返さなくていいときた。


 こんなにも領民のことを考えてくれる領主は他にいない。そんな二人の噂を聞いたあちこちの領民は、領地を移りたいと日々不満を零しているらしい。


 お父様とお母様が少し特殊であり、本来貴族はこの住みやすい王都から一日たりとも離れたくはないもの。


 贅沢な暮らしを味わえるのはここだけだし、王都に住んでるほうが貴族としての価値が上がるとでも勘違いしている者も多い。


 そのため、辺境に住む貴族を皆、田舎貴族だとバカにする。


 人間の価値は能力でしか決まらないというのに。


「クリーク。手紙って何を書けばいいのかな?」


 かれこれ一時間。真っ白な紙とにらめっこ。


 この手紙の目的はアラン・スミスという人物のことを知るためのもの。


 書きたいことはわかってるのに、書き方がわからない。


 正直に『アラン学園長のことを教えてください』なんて書けば、たちまち彼は翌日からその姿を見ることはなくなるだろう。


 完全犯罪を阻止するためにも、さりげなく問うのがベスト。


「お嬢様の素直な気持ちを綴ればよろしいのでは?」


 それが難しいんだって。


 真っ先にお父様の命令を聞き入れて殺してしまうのはクリークなんだから。


 私はクリークを人殺しにはしたくないのだ。


 他の話題でカモフラージュするにしても男のことを聞く時点で答えが返ってくるかも不明。


 こういうときは甘いものに限る。脳を活性化させないと。


「メロンシャーベットお願いしてもいい?」

「なんだかお嬢様。変わられましたね」

「そう?」


 まぁ確かに、内気なレックスと今の私は違いすぎる。


 変わったと思うのは間違いではない。本当に変わったのだから。


「ええ。正確には昔のお嬢様に戻ったと言うべきでしょうか」


 クリークは膝をつき左胸に手を当てた。


「十一年前のことで私共に仰りたいことがあるのなら、いつでもお聞き致します。忘れないで下さい。世界が敵になろうとも我々はいつでもレックス様の味方でございます」

「ありがとう。クリーク」


 目を細めて微笑むクリークがイケメンすぎる。


 これで独身なんだからもったいない。彼女の一人や二人、作ればいいのに。


「そうだ。クリークも食べる?シャーベット」

「よろしいのですか?」

「もちろん。そうだ。マリーが帰ってきたらみんなで食べよ」

「みんな?屋敷の者全員でしょうか」

「そうよ。美味しいものはみんなで食べるともっと美味しくなるの」

「それは知りませんでした。すぐに呼んで参ります」


 今度は人懐っこい笑顔を浮かべた。


 料理長から全員分のシャーベットはないと言われてその日は冷たいジュースで乾杯。


 シャーベットはお父様とお母様もいるときに食べることにしよう。


 それまでのお楽しみが一つできた。


 でも、家族三人揃うとクリーク達は席につかず立ったまま食べそう。それは嫌だな。


 席が足りないならいくらでも用意すればいいだけ。だから座ってとお願いしたくなる。


 クリークがグラスを片づけに行き、部屋にはマリーが残った。


「お手紙は相手に伝わらないと意味がないので、要点だげをまとめてみてはいかがですか?」


 真っ白な紙から変わらないことにマリーがアドバイスをくれた。


 もちろん、そうしたい。領地でも忙しくしているであろう二人の時間を長々とした手紙で奪うっていいはずがないのだ。


 ──でもね!!誰かクリークのことを止められる!?


 むしろみんな協力的になりそうで怖いのよ。


 気になった人をこっそり消されるなんて、たまったもんじゃない。


 お父様への手紙は短く簡潔に書くことにした。








 学園長がアラン・スミスというお方に代わりました。


 お父様のことを知っているようですがお友達でしょうか?

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