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友達にはなれない

 使われていない教室に時計はなく時間がわからない。


 こうして何もせず時間が流れるのを待つのは何年ぶりだろ。


 ここ数年は忙しくてゆっくりする暇もなかった。


 夜だって上司から連絡がくるんじゃないかと満足に眠れた試しがない。

 ワンコールで出なかったらめちゃくちゃキレるし。


「しまった。約束があるのに……」


 ボーッとするとつい理不尽だった前世のことを思い出してしまう。


 あの頃の『私』から離れると、おかしなことだらけだったと気付ける。


「ほんとどうしよう」


 私が友達を作る初日ということでお父様は仕事を休んだ。


 前向きなことを言ったのがよほど嬉しかったのか記念日にしようなどと言い出した。


 私以外は賛成していて、年に一度では少ない。月に一度祝おうと言い出したときには本気で止めた。


 あのときの悲しそうな顔。どうにか許可を得ようと潤んだ瞳。


 もちろん惑わされることなく却下した。


 これで友達が一人も出来なかったら恥ずかしい。


 それっぽい言い訳は考えている。


 みんな公爵令嬢には近寄りがたく距離を取ってしまう。


 これならいじめられてるなんて思わないはず。

 味方がいない以上、いじめがあった証拠は揉み消される。


 実際、ゲームでも闇に葬られてたし。


 公爵令嬢と次期国王の王妃なら、どちらにつけば得かは考えるまでもない。

 でもなぁ。公爵家のほうが怒らせたら怖いと思うんだけどな。


 真実を知ったハティはリンを断罪しない。

 あの男は自分こそが国であり法であると勘違いしている。

 独裁の王では国は豊かになるはずないのに。


 ハティは一体どんな王になりたくて、どんな国にしようとしてるのかな?


 都合の悪いことは蓋をして隠して、思い通りになる民だけ残す?


 それが目指すべき未来なら王として失格。


 って、なんで私。ハティのことなんて考えてんのよ。


 あんな奴の未来がどうなるか知ったこっちゃないんだから。


 せいぜい愚王として笑い者になればいいんだ。

 当然の報いじゃない。


 それよりもここからの脱出を試みないと。


 飛び降りる勇気はないし体当たりで扉を壊す力もない。


 ──詰んでるんだよなぁ。


 ほんとどうしようって言葉以外出てこない。


 ずっとこのままってことはないだろうけど存在感の薄い私を閉じ込めたことを、果たしてリン達は覚えているだろうか。


 餓死するほど放置はしないはず。夜には見回りもいるだろうし。


 ダメじゃん!!


 お昼までに出ないと。ご飯食べに行くんだから。


 はしたないけど大声で助けを呼ぶしかない。


「大丈夫ですか!?レックス様」

「ルーナさん?なぜここに」

「リンさん達が話してるのを聞いて」

「そうだったんだ。ありがとう」


 ルーナが来てくれなかったら今頃はどうなっていたか。


 怒り狂ったお父様とお母様。もしくはクリーク達までもが乗り込んできそう。


 アカデミーは一時間と持たず跡形もなく崩壊する予感。


 いじめに加担した生徒も見て見ぬふりしてる生徒も、貴族の身分を剥奪されるどころじゃない。

 完全犯罪を成し遂げる優秀な者達の手によって、明日にはこの世から旅立っている可能性ががある。


「助けてもらってあれなんだけど。あまり私に近づかないほうがいいですよ。せっかくルーナさんから私にリンさんの目が移ったことだし」

「私がお傍にいたら迷惑ですか?」

「そうではなくて。見た通り私は嫌われているから」

「なぜですか?」

「さぁ?なぜでしょう」


 リンのように派手で美しい人からすればレックスのようにパッとしない人間は視界に入るだけでストレスなのかもしれない。


 それって私の努力ではどうにもならないこと。


 存在なんてものは生まれて与えられたのだから。


「レックス様はお優しいのに。私にハンカチを……。そうだ。ハンカチは洗ってお返しします」

「迷惑でなければ貰って頂けませんか?」

「よろしいのですか?大事な物では」

「お母様もきっと許してくれると思います」


 泣いてる女の子にハンカチも貸せない淑女に育てられた覚えはない。


 それにあのハンカチはルーナが持ってるほうが似合っている。


 お母様には謝ろう。きっと笑って許してくれる。お母様はそういう人だから。


「ありがとうございます。宝物にしますね」

「あはは。大袈裟だな」


 私が普通の令嬢ならすぐにでも友達申請したいぐらいルーナは可愛い。


 絶対にルーナのほうが女の子てしてレベルが高い。男に生まれていたなら告白して付き合いたいな。


「ならせめて。一緒に帰ることは構いませんか?」

「………ルーナさん。確認なんだけどまだ授業ありますよね?」

「いいえ?もう下校です」

「え……ええぇぇーーーー!!!!」


 学園中に響いたかもしれない。


 一番近くにいたルーナはポカンとしていた。


 もうそんな時間経ってたなんて。


「約束があるの!!ごめんね!!あ、今日は本当にありがとう!!」


 言いたいことを一方的に言ってお父様のお店“ルポ”に急いだ。


 校内にはほとんど生徒はおらず、走っている姿は見られずに済む。


 仮に見られたとしても、あのレックスが廊下を走るなんて誰も想像しないから人違いだも思い込んでくれる。


 家族での外食なんて久しぶりで昨日から楽しみにしていた。


 どうか間に合いますように!(色んな意味で)

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