第4話 決心
テーブルに唯と武が並んで椅子に座り、その向かいにディオーネが座った。扉から若い女性が入ってきて、食事を唯と武の前に置き始める。召使いみたいな人なんだろうなと唯は思った。
食べ物は、見た感じがパンそっくりだった。
「口に合うかどうかわからないけど、食べてみて」
ディオーネは前に置かれた食事を食べながら、唯と武に促した。
唯は一口食べて
「おいしい!」と思わず唸った。
異世界の食べ物なんて食べれるかどうか不安だったけど、思っていたより美味しかったので安心した。
「この食べ物は、ある転生者から聞いて作ってもらったものよ」
ディオーネはいつの間にか全て平らげていた。そして、巨大な胸は重いのか、テーブルの上に置かれた。
「ディオーネさんは、その転生者が誰なのか教えてくれないんだけどね~」
武も美味しそうに食べながら、話している。
「私はこの国唯一のハーフエルフなのよ…昔はエルフや獣人達がたくさんいたけれど、みんな魔物に殺されてしまったわ…」
ディオーネは寂しそうな表情を見せた。
「そして魔物がエルフや獣人、人間を食べ、その魂は邪神が食べるのよ…」
「どうして今まで、魔物や邪神と戦わなかったんですか!?」
唯は食事の手を止めて聞いた。
「戦ったわ…たくさんの人達、そして英雄も…」
ディオーネは天井を見上げながら静かに語った。
「今まで何人かの転生者もいて、命をかけて戦ってくれたわ…転生者はね、この世界にいる人間達よりも魔力が高い場合が多いのよ」
「俺たちも魔力が高いって事ですか!?」
武は食事を全て食べ終わっていた。
「ええ~、多分ね。稀に魔力が全くない転生者もいるわよ」
「それって、要するに俺たちも魔術師になって、魔物達と戦えって言ってるのですか?」
武は唯を見ながら、ディオーネに言った。
「相手は邪神…いつ魔物を引き連れてこの国に襲いかかってくるか分からないわよ…」
ディオーネが何も力がないなら、いずれは殺されると言っているようなものだと唯は思った。
「邪神を倒すと、人々の魂が解放されて、そのエネルギーであなた達を元の世界に転生させる事も出来るのよ…ただし、この世界で死んでしまったらもう元の世界には戻れないわ」
武と唯は顔を見合わせた。
「邪神を倒すと、二人とも元の世界に戻れるんですよね?」
武がディオーネに聞いた。
「二人なら戻る事は可能よ」
出来れば元の世界に戻りたい。
また家族や友人達と会いたい。
このまま殺されるのを待つより、邪神と戦って早く元の世界に戻った方がいいと唯は思った。
「私、やってみる!また家族や友達に会いたいもんっ!」
唯は決心した。
「俺もやってみるよ!」
直ぐに武も返事をした。
「ただ邪神にやられてしまうと魂は食べられて、肉体は別な魔物になってしまうの……それだけは頭に入れておいてね…」
唯は、自分が魔物になった姿を想像して身震いした。
「それでは明日から、特訓開始ね!」
ディオーネは、微笑みながら二人に言った。