第3話 地上最強の魔術師
唯は、気付いたら見知らぬ場所のベッドの上で目が覚めた。西洋風の部屋なのだろうか、テレビで観た事がある物が部屋に溢れていた。
いきなり部屋のドアが開き、綺麗な女性が入ってきた。
「あらっ、気付いたようね」
その綺麗な女性は、ベッドで横になっている唯に声をかけた。
「貴女は誰ですか?」
「私!?私は、ディオーネ…ここエゾシリア王国の王宮魔術師最高顧問よ。そしてここは宮廷の私の部屋よ」
唯は意味不明な事を言われて、頭が混乱していた。
「あなたをこの国に転生させたのは私よ」
唯の近くに寄りながら、そう話した。
「転生って、どういう意味ですか?」
唯は、体を起こしディオーネを見つめながら聞いた。ディオーネの服装は、どう見てもテレビや映画に出てくる魔女にそっくりである。
唯より、2周りも大きい胸に女性でも気になって目がいく。
「あなたは元にいた世界で死んでしまったの。そしてある人に言われてあなたをこの世界に呼んだのよ」
ディオーネはドアの方に振り向きながら、そう話をした。
「…そうなんですか、私は死んでしまったんですね…」
唯はうつ向きながら、そう呟いた。
「…この世界って、どこなんですか?」
唯は辺りを見渡す。あの世ではなさそうだと、自分なりに納得している。
「あなた達の言葉で言えば異世界って事になるわね。この世界は魔物が蔓延る残虐で無慈悲な世界よ」
ディオーネは自分に言い聞かせるように呟いた。
「あなたを転生させたのも、偶然じゃないのよ。ある人がどうしてもと頼むから。その人も死んでしまってこの異世界に転生させたの」
ディオーネは微笑みながら、唯に説明した。
「ある人…さっきもある人って言ってましたよね!?」
唯は、現実を少しづつ理解しながら尋ねた。
「ドアの前で話を聞いてるんでしょ?少しは説明したから、そろそろ入ってきたら!?」
ディオーネはドアに向かって声をかけた。
するとドアがゆっくり開き
「会いたかったよ!唯!!」
大声を出しながら、部屋の中に武が入ってきた。
「たける!?何でここにいるの?」
唯はびっくりし、ベッドから飛び起きた。
「俺もトラックにひかれて、死んじゃったみたいなんだ」
武はそう言いながら、唯の側に来た。
「会いたかったよ、たける!」
唯は武に抱きつき、泣きじゃくった。
「たける、ごめんなさい……私のせいで…」
「気にしないで、唯…君を守りたかったんだ…また君にこうして会えたんだから、俺も嬉しいよ」
武も目に涙を溜めている。
ディオーネは、少し離れた場所でウンウンと一人で頷いていた。
「それじゃ、感動の再開もした事だし、続きは食事でもしながら話しましょうか、、、」
ディオーネは二人を食堂まで連れて行った。