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戦国志  作者: 夜神 颯冶
戦国語り
5/6

こうしてあふれた難民を各国が拒否きょひするのも、

この当時飢饉や紛争で領土を失った難民が、

各地に放浪ほうろう、し領主が受け入れを拒否していたのに近い。


この当時の大名も、

難民問題に頭を悩ませていたのである。


ただそれを受け入れる国もあった。


この当時難民を多く受け入れたのは今川氏いまがわしである。


海道一かいどう弓取ゆみとりと呼ばれ、

【海道とは東海道をす】

のち桶狭間おけはざまで信長にたれる事となる今川義元(よしもと)である。


弱小の信長に負けた事から無能と評価される事の

多い義元だが、果たして無能だったのか。


混沌の時代、全国に先駈さきがもとからの独立を宣言し、

【日本で一番始めに公式に独立を宣言】

自国で独自の法律を制定せいていした人物である。



そんな今川義元いまがわよしもとの難民受け入れ政策を読みく時、

そこから今川義元の戦略せんりゃくが見えてくる。


この当時、米の生産量が現代の税収と言うことになる。


その税収は民の数で決まる。


人口が倍ある国は税収は倍である。


難民を受け入れ人口を倍にすれば、

生産量が倍になるだろうか?


答えはいなだ。


簡単に考えれば難民を受け入れでば、

食料の生産が倍になりそうだが実際にはそうはならない。


米を作るには田畑が必要で、

新しく入った人が耕す田畑を新しく開拓するとなれば、

すぐには作物が育たない。


すぐに作物が育つ土壌どじょうにはならないのである。


2~3年は土地が肥えるのをまってからの収穫になる。


その間、今までの生産量で難民を食べさせなければ、

みなえ死にする。


新たに土地を開拓しなければ、

現存げんぞんする土地から採れる米の量は変わらない。


単純に食いぶちが増えるだけで税収は減るのだ。


難民を受け入れれば生産が倍になるどころか0になるのだ。


この当時の人間にとって農業知識は常識であり、それゆえ

どこの国も難民を受け入れたがらなかったのである。


今川義元がそれでも難民を受け入れる政策に

踏み切った訳はなんだろうか。


自国の農民を減らさずに戦争に従軍させる兵員とするために、

難民を受け入れた可能性が高いのである。


それこそが義元のねらいではなかっただろうか。

 


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