ウサギとキツネとタンポポ
ウサギの親子は野原で大好きな草をムシャムシャと食べています。ふと、うさぎの子供が尋ねました。
「お母さん、キツネってなあに?」
お母さんは、天を見つめて答えます。
「キツネってのは地獄からきた悪魔だよ。何も悪いことなどしていないウサギを捕まえて、体を引き裂いて食ってしまうんだ。お父さんもキツネに食われたんだ。ああ酷い話だよ」
「ひいっ」
ウサギの子供は震え上がります。
「神さまがいるのなら、あのような悪魔をどうして野に放たれたのかねえ……」
「怖いよお母さん。帰ろうよ」
ウサギの親子が立ち去った野原で、今から飛び立とうとするタンポポの種が、タンポポに尋ねました。
「お母さん、キツネってなあに?」
タンポポは答えます。
「神様の使いです。恐ろしいウサギ達は、何も悪いことをしていない私達タンポポを食べてバラバラにして胃で溶かしてしまいますが、そのウサギ達を退治してくださるのです」
風が舞うとタンポポの種は次々に飛んでいきます。タンポポは子供達にお別れの言葉を送ります。
「地獄から来たウサギ達はキツネを恐れて帰りました。坊や達は安心して飛び立ちなさい」