叫び
憶病で
情けなくて
ただ書くことしかできなくて...
誰かに知ってほしくて
ここにいると知ってほしくて
助けてほしくて
でもどうしたらいいかわからなくて
岡山白陵中学高等学校
寮で私に対するいじめがあったとはいう
だが
西谷
藤田
佐藤
武村
橋本
坂ノ下
を筆頭とした
彼らのいじめを認めることはできないという
時間
そう時間が経ってしまったからだと
なら
私はなんのために当時訴えていたのだろうか
中学三年から
高校までにはなくしたいからと
受験に響かせたくないからと
わざわざ合法的な手法で寮監に申し上げ続け
話し合いを続けたのだろう
私と私の同室の二人
なぜこんな思いをしなければならなかったのか
寮監はいった
そんなことより勉強に集中しろと
酷くなるからと身体を悪くするからと頼んでも
そんなことはないの一点張り
どうにかしてくれといっても
どうしろというんだと怒鳴られた
分からない
私たちの何がいけなかったのだろうか
じつは彼らを罠にかけるのは簡単だった
階段で肩をぶつけてくることがあった
もしあのときふっと転んでいたら
まどろみのなかで押されたような感覚があったとしたら
まず間違いなく彼らが押したことになっただろう
現実はそんなことはせず
彼らが扉をバタンバタンと開けてくる音がする
死ね死ねという彼らの声が聞こえる
時間
そう時間とともに中高の知識が抜けていく
大学の知識も抜けていく
なんのために生きていたのだろうか
十年もひきずってと警察は言った
私の血は臭いですかと訊ねた
臭い臭いと窓をあけて言い放たれた
私の血は臭いらしい
それ以上なにかを訊ねても
ただ聞くな答えるなと無視され
何事もなかったかのように両親に引き渡され
クリニックへと向かった
あのとき死んでおいたほうがよかったですか
その答えは無言
無言の肯定だったのだろう
死ね死ねと彼らの声が聞こえる
時間
病院にかよい数年
肝臓が脂肪肝だという
ストレスをまぎらわすのに食べ過ぎなのだろう
それは実感している
だが数値はいったりきたりだった
変わったのは母の胃癌からか
多く食べられない母のために
高カロリーのタンパク質・脂質を中心にした
抗がん剤で体重が落ち体力が落ちるのを防ぐため
当然のごとく残る食事は私が食べた
食べられるかと問われれば食べられるから
とりあえず母の術後抗がん剤さえ終わればと思っていた
肝臓の数値が悪くなったがもう少しの我慢だと
そう思っていた
だが
医師から紹介された病院でことごとく無視された
脂肪肝以外の理由があったら困るからと
そういう話で別の病院へと紹介をうけたのだ
その医師は脂肪肝だという
治せといった
忌々しそうに他の検査もするがと付け加え
脂肪肝でまず間違いないと断定した
食生活を改善しろ
運動ではやせない食べなければいいと医師は言う
そう食べるな
食べなければいい
だが両親は食事をさそってくる
どうすればいいのだろう
悩んで工夫して
段々わけが分からなくなってくる
私はなんのために食べているのだろうか
食べてどうするのだろうか
こみあげる吐き気をおさえながら
考え考え
思考の上から食べるなという声が聞こえる
風呂に入ると気持ち悪い
他人を見ると気持ち悪い
理由もなく自室に他者がいると気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
ああ
キモいといわれたなと
キモイキモイと中高で味わったささやきが聞こえる
時間
今は何年で何歳で
鏡の向こうのあなたはだあれ
こんがらがってこんがらがって
学校に居場所がなくて
治療機関に居場所が無くて
法治国家に居場所が無くて
私の居場所はどこにあるのだろうか
家?
家にいて何をするのだろう
何かすることがあるのだろうか
両親の望みに望んだ一人っ子として生まれて
私がいなくなったら両親はどう思うだろう
ただそれだけ
それだけが居場所だった
だが両親はいずれ死ぬ
それは紛れもない事実だ
なら
私の居場所はどこにあるのだろう
私はどこにいればいいのだろう
情けなくて
情けなくて
満足に文字をよむこともできなくて
知識は抜けに抜けていくばかり
幼稚園の年長から目指した研究者の夢は
ただただ時間とともに消え去りゆく
私の何が悪かったのだろうか
私のどこが悪かったのだろうか
分からなくて
分からなくて
答えをどんなに探しても見つからなくて
見つからないまま時間が過ぎて
人間は生まれて死ぬ
生命とは生まれて死ぬ
そう生まれて死ぬのだ
私がどこにいようとどこにいまいと
ただ死だけが待ってくれている
だがその後は
残された両親は
今ある唯一の居場所が狂わしてくる
私はどうすればいいのだろう
私はどこにいればいいのだろう
どこまでも憶病で弱虫で
ずるずると時間がすぎていく
私はここにいる
誰か見つけてほしい
誰か見つけて
もう何が何やら分からなくて
ただただ
そうただただ体を横たえるだけ
こうして書き連ねて
書き連ねて吐き出して
そして
誰か私を見つけてください
もう自分では分からなくて
ひとりでは入れない風呂に親と入り
あがったら片足が沼に沈むような感覚がして
一瞬のことに慌てて
なんとか転ばずに済んで
こみ上げる吐き気を我慢して
寝る前の薬を飲んで
そして
寝れなくて
頭の中を音がしないのにこだまする声がうるさくて
分からなくて分からなくて
吐き気に耐え切れずに吐いた先には
ただただ
私は何をしているのだろうと虚無感だけが広がって
きっとこんな思いは皆にとっては簡単なことなんだろう
生きてる人々には簡単に答えがだせるのだろう
うるさい声は生きている人がつむいだ言葉なのだから
なら私は
答えが出せない私はやはり落伍者なのだろう
生きていなくて死んでいなくて
何ができるのかも分からない
見えていたはずなのになにもかもが平面の色になる
体が動かせていたはずなのに動かし方が分からなくなる
普通に聞こえていたはずなのに耳鳴りにかき消される
頭の中で考えていたはずなのに靄がかかる
どうして
どうして
どうしてなんだろう
必死で手を動かして
頭にある言葉をなぞっていって
こうして文章にしていって
一体いくつの言葉が零れ落ちただろう
何が書きたくて
何で書こうとして
何を書きたくて
何してるんだろう
私は何
何をすればいいの
どうすればいいの
私は誰
私はどこにいるの
生きてる人はすごい
答えられるのだから
私には答えがない
だから
生きてる人
誰か助けてください