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愚者に聖剣は似合わない  作者: お湯とOrange
8/16

八年前の出来事 (その3)

誰かに期待されるはずもない話ですけれど、本日は2話目の投稿です。

「ここまで唐突に、なんの脈絡もなく不可思議なことが起こると、人は逆に冷静になるのか」


今の現状を口に出して言ってみても、世界は何も変わらないし、僕はやはり冷静だった。今の現状ってなんだよ、今の今の状態って、それは現状の一言でよかったと考え直す。やはり僕は冷静ではないらしい。


しかしそれも仕方ないというものだ。こうまで現状が己の理解とかけ離れたものであれば、人は冷静にはなれないらしい。

さっきと思っていることも真逆だが、それも冷静でないならば仕様がない。


仕様がないというか、全くどうにもしようがない。


これは僕自身が何かをした行動の結果に起こったことではないし、まず原因がわからない。


一体どうすればこのような、ワープというか、転移というか、そんな現象が起こりうるというのだろうか。


こんなことを起こせる存在がいるのだとすれば、それはきっと神様か何かの仕業に違いない。


そういえば学校の図書室や、知り合いの持っていた本の内容に、今の状態は酷似している。


なんだったか、確か異世界転生とか、そういうものだっただろうか。


流石に異世界に転生するわけもなければ転移する理由もない。僕は別にトラックに轢かれたり、殺されたりした覚えもないから転生ではない。だからあるとしてもこれは異世界転移だ。


というかまず、前提として異世界なんてものが存在するわけもないのだから、きっとここは地球のどこかなのだろうが、なるほど、人はいきなり知らない場所に立っていれば、まるでそこは異世界に感じるものらしい。


今の僕も全くの同意見で、ワープか何かがいきなり起こり、訳も分からず立っているこの場所を、まるで異世界のように感じていた。


うん、自分がだんだん冷静になってきたことを感じる。


しかし、ここがどこなのか、異世界であるというのであれば、神様のひとりやふたりは現れて、俺にチートスキルとやらを下さってもいいのではないだろうか。


神様が現れもせず、またチートスキルとやらも貰ってない以上、やはりここは地球のどこかで、もしかしたら地球の科学者がワープ実験を行っている時に不具合が起こり、たまたま何かの間違いで、とばっちりで僕がその被害者になったと考える方がまだ有意義というものだろう。


とりあえず、助けを待つにも来る気配もないし、ここは自分の足で近くの町か村かだかにまで歩いていった方が良さそうだ。


現実を見はじめて、だけれど、少しだけ思ってしまった。


(ここが、異世界であればいいのに……)


結局、このまま帰った所で、それは今日までの日常を、明日からも繰り返すことになる。


なんら生活に支障を感じているわけではないけれど、生きるのは別に楽しいことではない。


それは、これまでの人生で理解した、この世の中の真理だ。あの生活の真理だ。


生きてくのに、いいことなんてない。

それならいっそ、ここが異世界で、周りには何も無くて、そのまま異世界らしく、近くにたまたまいた魔物だかに殺されたり、食べ物もなにもなく、そのまま餓死した方が幸せなのではないだろうか。


そうやって、死んでしまった方が、僕の人生においては幸せなのかもしれない。


どうやら、僕は人生とやらに未練も何も、残っていないらしい。この場合、残るようなことなんてひとつほどもあった覚えすらないが。


如何せん、こんな何も無い場所でぼーっとしていたら、悪い方ばかりに考えがいってしまう。生きていたらいい事だって何か起こる。とりあえずは一緒にこんな何も無い場所にワープしてしまった夕食の残りを食べ終え、人気のある場所を探してしまおう。


そう考えて隣にある夕食を食べるためにも箸を持ち、そして茶碗を持った時にふとした違和感を覚える。


なんだか、大きくなってないか……?この茶碗。そして箸までも。


はぁ、こんな非現実的なことばかり考えてしまうから、次々に非現実的なことばかり考えてしまう。


普通に考えて、箸や茶碗が大きくなるわけがない。そう、ここは異世界じゃないのだから。


非現実的な考えを頭から振り払い、目の前にある夕食の残りを食べていく。


小さな違和感が、ありえないと思った違和感が、ここに来てどんどん膨らんでくる。


ありえない、現実的に考えてありえない。

まさか、箸が大きくなったわけでも、茶碗が大きくなったわけでもなくて、俺の体こそが小さくなっただなんて、いくらなんでもそんなはずはないのだ。


手のひらを見て、あれ?僕の手のひらが小さくなってる?だなんてそんな、そんな、それならば、まだ神様からチートスキルとやらを授かる方が、まだ現実的な異世界転移というものだ。


まさか体が小さくなっているだなんて。


僕は食事する手を止めて、やはりまだ自分が冷静ではないことを自覚した。

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