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愚者に聖剣は似合わない  作者: お湯とOrange
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八年前の出来事 (その2)

その日は、いつもと同じ空をしていた。


毎日毎日が同じ事の延長戦でしかない、今日とは昨日の続きであって、だから明日はきっと今日の続きでしかない。


今日起きなかったことは明日も起きないし、昨日起きなかったことは今日も起きない。


日常とは、日々移り変わるようでいて日々が同じことの繰り返し。


とどのつまりは、毎日毎日無駄に屋敷の雑巾がけを行い、縁側の床を大理石が如く磨く行為は一生続くものであると、僕はそう思っていた。


僕の毎日の日課は、朝起きたら3人分の朝食を作り、僕以外の、この屋敷に住まう3人が朝食をとっている間に屋敷の掃除と洗濯、掃除が終われば自らの朝食を作り、食べたら学校に行く。


まぁ居候としては普通の生活だろうと思う。

親族とはいえ、実の孫ではあるものの、結局自分たちの血が4分の1しか入っていないのだから、家族としての役割も4分の1しか行わなくていいという祖父母の考えには同意しているし、住まわせてもらって食料まで用意してもらっている以上、祖父母の屋敷を掃除するのは当然のことだと理解している。


だけれど、だから朝という時間帯を好きかと聞かれればそれは嫌いだ。自分一人では生きることすら出来ない事実を思い知らされるこの時間は、自分の中で劣等感を感じるから。


だから、朝という劣等感そのものが終わって、学校で過ごす時間は嫌いではない。


屋敷の中と比べると、学校とは自由そのものであると言っても過言ではない。

楽しく話せるようなクラスメイトはいないけれど、消しゴムを落とせば拾ってくれるくらいの知り合いはいる。


夜になれば、また屋敷に住まう3人の夕食を用意しなくてはならないし、朝に干した洗濯物を取り込み畳む。


朝ほどやることが多い訳ではないけれど、それが嬉しい訳では無いし、ただやらなければならないことをやるだけだ。


小学生になり、高校3年生になるまでずっと続いてきた毎日は、劣等感に苛まれる人生だった。

だからこれからも、一生を劣等感と共に、それこそ死ぬまで続けていくものだと思っていた。


だけれど、今日という一日は、昨日までの毎日と続くことはなくて、今日という新しい一日の始まりだった。


今日はやけに星が輝いてると思いながら、今日一日の己の役割を終え、夕食を一人縁側で星を眺めながらとっていた時だった。


夜空にはためく星の中で、一際輝くその星が。僕はそこまで星に詳しい訳でもないし、星に対しての一般常識なんて欠片もないから星座の数が88個ときっちり定められていることくらいしか知らないし、じゃああの星は何座の星だなんて分からないけれど、ただ風流に感じながら。

ただぼーっと、全てを忘れて眺めていた。


ただそれだけなのに、その星の輝きに他の星の輝きが追いつき、一面を覆う全ての星が輝いて、まるで見た事はないけれど、宝石箱の様相を呈した。


そして、気付けば僕は、先程まで縁側座って、星を眺めながらとっていた夕食と共に、全く知らない野原の下にいた。


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