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愚者に聖剣は似合わない  作者: お湯とOrange
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八年前の出来事 (その11)

「まぁ、勝てないのは勝てないんだろうけど、こんだけあれば十分でしょ」


僕の肩にかけられた鞄には、限界ギリギリまでヌクモリグサが積載されていた。


未だ遥か上空の二つの太陽は重なってはいない。二つの太陽が重なる時は大体12時くらいだから、大体今は10時過ぎと行ったところだろうか。


「そういえばここ、転移して最初の野原に近いくらいかな?」


最近この辺りの地形について詳しくなってきていたからか、ここが最初に転移してきた野原の近くだということが分かる。


あれから僕は一度もあの野原にはいってない。


というのも、村にある周辺の地図を見ても、僕が転移してきたであろう野原はどこにも記載されていないのだ。


村にある周辺の地図というのは、山脈に囲まれた土地についてはそのほぼ全体を網羅しており、魔物が出現するとされている縄張りのみ、縄張りの正確な位置を除いてそれ以上は記載されていないからだ。


魔物、最初に聞いた時は確か神魔大戦の話の時だっただろうか。


後で詳しく説明された内容としては普通の動物、簡単に言えば牛や馬、羊や鳥などは、微細な魔力は保持しているものの、その魔力を魔術などに使うのではなく、ただ己の生命活動の維持くらいにのみ使うのみである。


それに対して魔物は、自らの生命活動の維持に必要な魔力量の何倍もの魔力を保持していて、それを人間やエルフ、魔人とは違った魔術体系に用いることによって魔物専用の魔術を使用する。


伝説上の生き物であるドラゴンや不死鳥などは、魔物以上の魔力量を保持していて、更に空気中に漂う魔素を、空気中に漂っているままに魔力に変えて魔術に用いるといった、正しく伝説上の生き物に相応しい使い方までできるらしい。


ともかく、魔物とは魔力量と魔力の使用用途が多い動物といったところであるらしい。

神が率いたという聖獣も、実際には魔物と似たような性質をもっていることから、魔物と表裏一体の存在と言えるだろう。


さて、つまりは魔物が生息しているといった危険な地域を除いて、その全てを事細かく記載している村の地図に載ってない野原。


地図上ではそこは森とされていた訳だが、確実にあそこは野原だった。


最初は地図も案外適当に作られていたりするのかな?なんて思ったものだけれど、この地図はとても細かくその全てが記載されていて、それは実際自分の目で見て確認しているので地図自体はとても正確なものだ。


そんなこんなでこの2ヶ月は、この先ここで生きていく知識として、周辺の地理確認とかをしてきたこともあって、かなり村の周辺には詳しくなった。といっても子供の足で歩ける範囲ではあるけれど。


僕が転移してきた野原は、別にそんなに正確に把握していなければならないほどに重要な事柄ではないけれど、時間も余ったし、暇潰しに行ってみようか。もう薬草も鞄に入らないし。


……というか、エンリーはどうやっていつも薬草の採取量が僕より多いんだろうか。僕も最近は鞄いっぱいになるくらいにはつんで来ているのに……





【転移者特典!みたいなものは人間は好きだろう?自分しか得ることの出来ないサプライズでビックなプレゼント!これで君は、別に何か変わる訳でもないのにね!所詮クソみたいな人生を、クソみたいな気持ちで生きてる以上、クソみたいな人間しか出来上がらない、クソだったね!】


日本語で、そう彫られている石造りの台座。

その上には、いかにもみたいな面持ちで剣が一振、まるで抜けば君も英雄!みたいに台座に刺さっていた。


さて、僕にも流石に色々な疑問が浮かんでいる。

過去の記憶と、地図の記憶を頼りに野原まで来てみれば、そこには一点を除いて全く変わりのない野原が存在していた。


やはり地図の記入漏れだろうか?と考えながら野原の中央に鎮座する剣の所まで来てみた所で、そんな些細な疑問はすぐに意識の奔流に飲まれてしまっていた。


さて、何で剣が台座に刺さっているのだろうか?なんで2ヶ月前にはなかったものが今はあるのだろうか?そして、なんで剣の刺さった台座に、日本語でクソみたいなメッセージが彫られているのだろうか。


というかなんだこれ、人の全てをクソみたいに扱いやがって。あながち間違いでもないから、僕はクソだ。


問題はメッセージの内容ではなく、その表現である。


この世界に、日本語はない。


僕の言葉はエルベスの民のみんなに伝わっているけれど、どうやらエルベスの民が使っている言語は、この大陸の標準言語であるらしい。少なくとも日本語でないのは確かだ。


それなのに僕は日本語で喋っていて言葉は通じている。そこは疑問だけれど、僕の発音する単語は全て標準言語に聞こえているらしい。


ただ、文字はその限りにあてはまらず、僕が日本語で書いた文書は少なくともエルベスの民には何かのイラストだと解釈されている。


逆にエルベスの民の書く標準言語は、僕からしてイラストみたいな文字であって、それを文字だと言われなければ文字だとは思えないほどである。


だから、この台座に書かれている文字が日本語として成立しているのはおかしな話なのである。


何らかの理由で適当に筆を走らせた結果、結果として日本語になっているというような訳では無いのは確かだ。


さて、この見るからに怪しげな剣と台座。

僕は一体どのようにして扱うのが正しいのだろうか。

文書の終了が疑問形ですけど、決してアンケートの結果でこの先のストーリーが変わりますといった、そんなことはありませんのであしからず……

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