表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者に聖剣は似合わない  作者: お湯とOrange
13/16

八年前の出来事 (その8)

ここはお主が今まで生きてきた世界ではないであろうね、へぇ、そりゃよかった。


「見た目よりも、ずっと取り乱しておるようじゃな……そりゃ当然か、わしだって初めて見る」


「なんですか、初めて見るって。まるで見たことはないけど、聞いたことはあるみたいな口ぶりじゃないですか」


「実際その通り、見たことはないが聞いたことはあると言っておる」


どうやら村長曰く、他の世界からこの世界に来たという存在は過去に1人だけ存在していたらしい。


「何から説明していいか、まぁわかりやすく説明してやろう。どうせお主の記憶喪失とやらも、現状をうまく説明するよりもそう説明した方が楽じゃからであって、本当に記憶喪失というわけではないのじゃろう?」


「まぁ、言ってしまえばそうですね。嘘ですけど。記憶喪失と説明すれば、常識が欠如していてもおかしくはないでしょうから」


「まぁ、正しい判断よの。さて、ならこれからお主に説明するのは、この世界の常識とやらじゃ」


曰く、この世界は生まれた其の時よりふたつに別れていたらしい。


世界には神が生まれ、そして神と対を成す魔神も生まれたと。


世界に陸地が生まれた時、世界には海が生まれたと。


世界に命が生まれた時、世界には死が訪れたと。


そして、世界に人が生まれた時、人と対を成す、魔人が生まれたと。


そして、二組一対となる存在が生まれた時、神は考えた。


全てが2つで初めて1つとなる、二組一対の世界で、完璧なる存在である私たちが、魔神と対を成すのはおかしいと。


「わしらエルベスの民は、別に今の主神である天神を信奉する訳でもなきに、簡単に言えば慢心しておったのじゃろうな」


そして、神は魔神を相手に、世界を二分する戦争を起こした。


神魔大戦といわれる、世界最大にして世界最古の戦争。


「世界はその大戦によって混迷を深めた。神は人間や聖獣を率い魔界に攻め入り、魔神は魔人や魔物を率いてそれを迎えたのじゃ。最初こそ戦況は均衡を保っていたものの、魔神は自らの血肉を素に、魔王と呼ばれる恐るべき力を持った下僕を生み出した。それにより大戦の天秤は、魔神側に傾き始めたのじゃ」


そして、このままでは負けると思ったのか、神はこの世界とは違う理を持つ世界から、勇者と呼ばれる者を召喚した。


「その者はこの世界では今まで有り得なかった黒い髪を持ち、黒い目をしていたと言われておる。今でこそその勇者の子孫がその血を受け継ぎそれも珍しくはなくなったが、それこそ違う理の世界から来たという紛れもない証左であった」


勇者の力により、それまで劣勢であったはずの神と人は、逆に魔神側を追い詰めるまでになった。


そして勇者と神は、魔王を打ち破り、遂には魔神を封印するまでに至ったという。


「それこそが神魔大戦であり、そしてこの世界ではない別の世界があるということを、わしが知っておる理由じゃ」


「ですが、それが私がその勇者と同じ、別の世界から来た存在ということを説明する理由にはなりません」


「そうじゃの、しかし、お主が別の世界から来た理由というのも、お主には伝承で伝え聞く勇者との共通点が幾つかあるからじゃ」


「黒髪黒目である点ですか?しかし、それだけでは判断に乏しい。貴方は言ったじゃないですか、昔でこそ珍しかったかもしれないですけど、今では勇者の子孫がいて、その特徴も珍しいものではなくなったと。なるほど、この世界はどうやら、僕の元いた世界ではないかもしれない。しかし、全ては貴方の作り話で、この世界は私のいた世界で、ここは地球である可能性だって捨てきれない」


「確かに、黒髪黒目というだけでは納得できんのもわかる。が、わしは共通点が幾つかあると言ったではないか。それに、多分お主はもう気付いておるじゃろ。わしの話が作り話なんかではないことに」


「お主には、端的に言えばその身に宿る魔力のその一切が確認できん。この世界では、多少なりとも生き物には宿るはずの魔力が、一切お主には感じられんのじゃ」


--それが、お主はこの世界ではない別の世界から来たという一番の理由になりえる--


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ