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愚者に聖剣は似合わない  作者: お湯とOrange
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天河翼



天河翼には友人がいない。

友人がいないといってもそれは、ただ単に本人の思い込みではあるのだが、どうしても天河翼には友人というものを作れないでいた。


周りの友人からすれば知り合いでは済ませないほどには友達ではあるのだが。


(どうやったら友達というものが出来るんだろう。きっと、周りのみんなには息を吸うように、そして吐くように簡単な事なんだろうけど)


要するに天河翼という少年には、自身が心を許せる存在がいないということである。


(漫画やアニメの中ではよく仲間に背中を託したりとか、友人だからという理由で掛け値なしに信じたりするものだけど、それがよく分からない)


彼の両親は彼が心というものを育む前に、言葉というものを理解する前に他界している。

だから彼が友達が出来ない等と思うほどに卑屈であり、他人に心を許せないのも或いは仕方が無いことなのかもしれない。


両親が死に、彼は祖父母の家に預けられることとなった、或いはその祖父母が彼に対して人道的な扱いをし、対応をしていたのであれば別の道があったのだろう――しかしそうではなかった。


(信じる)

(簡単なことのように言わないで欲しい)


ただそれだけの事が、たかがそれだけの事なのに、天河翼には人を信じるということが余りにも難しかった。


それは彼の育ての親が彼にとって心から信頼ができるような人物ではなかったということが問題だし

誰かを信じなくては、その誰かとは友達にはなれないと思っている天河翼には友達が作れない理由である。

実際には、掛け値なしに信じれるような人物のことは親友と呼ぶし、或いは心友というものなのだが。


とはいえ、やはりそうなると彼の周りに友達はいなかったということである。

彼のことを掛け値なしに、なんの理由もなく信じてくれるような人間など一人もいなかったのだから。


きっと天河翼が犯罪を犯し、デリカシーの欠けらも無いような大人達が特集のためにクラスメイトに彼の人物を聞いた時は恐らく


「そんな人には見えませんでしたが、犯罪を犯してもおかしくはなかったのかもしれません」

だとか

「いつも一人でいて暗いやつでしたし、彼が何を考えていたのかは、どんな時でも全く分かりませんでした」


なんて彼のことを慮ったり、庇ってくれるような人間は一人もいないのだろう。

知り合いでは済ませられないとはいっても、所詮は友達と呼ぶべきものの中でも高い位置に置いてあった訳では無いのだから。


とはいえやはり、それは他人に対して心を開くことも、掛け値なしとは言わない迄も人を信じることができない天河翼が悪いのだが。


だからこそ彼は、自分が通っていた学校にも、自分が住まわせてもらっていた祖父母の家にも、自らが記憶することすら出来なかった両親にすらも未練などあるはずもなかった。


今まで自分が生きていた、その世界にすらも――





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