99話・俺の彼女がムゲを見つける
「やっと、見つけた。そんな所にいたか......ムゲッ!」
自分の目の前にいる小太りの男...ムゲに、カノンが目線を向けて
睨み付ける。
「ん...いきなり騒がしいと思えば、カノンじゃねえか...?俺様を
探していたようだが...一体、何用だ?」
「そんなものは決まっている...。コウ・ラーディス...これだけ言えば、
全てわかるだろう?」
人差し指をビシッと突きつけると、ムゲに向かって静かな物腰で
カノンが呟く。
「コウ・ラーディス?ふん...さあな、誰の事やら、さっぱりだな?」
「ふ...あくまでとぼけるか...。まぁ...それはわかっていた事だ。
だがな...これを見てもとぼけていられるか!」
コウという人物なんぞ知らんとばかりな表情を見せるムゲに、カノンは
想定内と懐から1枚のスクロールを取り出して、それを広げてムゲに見せる。
「そ、それは、『公式決闘許可書』!?」
カノンの見せたスクロール...これを公式決闘許可書といい、これは先生や
学園が決闘の許可を正式に許した証拠の書である。
「これがあると言う事は、言わずともわかっているよな...?」
「ふん、当然だ。公式に許可された決闘...。それから逃げた者は、
かなりのペナルティを食らう...」
「ああ...そう通りだ。さぁ...そういうわけだ...尋常に勝負しろ、ムゲ!」
そう意気込みを見せるカノンが、先生から借りた魔法無効化解除の
スイッチを押す。
「ち...しょうがない。公式の名を出されたら戦うしかないか...!」
ムゲが覚悟を決めると、腰に下げていた持っていた棒を手に取ると、
棒の先から、鉈先が飛び出した!
「鉈か...相変わらず、そのエグい武器を使っているんだな...お前は!」
「いいじゃねぇか、これがスパッて斬れて気持ちいいんだよ...!」
ムゲがそう言うと、カノンの目の前で鉈をブンブン振って威圧する。
「さぁ、準備はできた...。まずはお前からかかってこいよ、カノン!」
ムゲがニヤッと口角を上げて手をクイクイっと動かし、カノンを挑発する。
「ほう...この私に先手を譲るとは...お前らしくない紳士っぷりだな!
では、遠慮なく行かせてもらうぞ!」
カノンが腰に下げていた槍を手に取ってグルグルと回し、ムゲに向かって
突進する!
「ハァァァ―――ッ!食らえ、ムゲェェェッ!!」
振り上げた槍をしならせて、ムゲの脳天目掛けて叩き込む!
『ふん...あまいな、ブースト・プロテクトッ!』
「何っ!?」
ムゲが防御アップ魔法ブースト・プロテクトを詠唱すると、ムゲの周囲に
薄いバリアが展開され、カノンの槍を弾く!
「お前、魔法はからっきしだった癖に、その魔法...いつ、覚えた?」
「ふん...それをお前に教えると思っているのか?来い!テッカ、メンダ!」
ムゲが指をパチンッと鳴らすと、ムゲの左右に二人の人物が立って
身構える!
「げふふ...でヤンス!」
「ぐふふ...ゲス!」
「お前達...その大きなオーラ、これは...どういう事なんだ...!?」
目の前に現れたムゲの手下、テッカとメンダの凄まじいオーラを
感じたカノンは、額に一筋の冷や汗を流すのだった。




