98話・俺の通う学園の罰則
「クーナさんも知ってると思うけど、この学園では自分の生まれを
鼻にきかせる行為はタブーなのに、あんな堂々と俺様貴族発言や
人種差別をする連中だからね...」
それを考えると馬鹿以外の言葉が見つからない...。
今、俺が述べた様に、この学園ではこういう貴族絡みの問題を想定した
校則があって...
有無も言わせずの、恐喝、恫喝、強制、等々...これらを行った貴族や
地位の高い人物を対象にした校則だ。
そしてこの校則を破った者は、如何なる地位の子どもだろうと、
どんな血筋の者だろうとも、大国ランスロッドの名を元に
執行される罰則を受け、軽くて数ヶ月の停学...
やった行為が最悪だと判断されたら、即退学となる。
「まあ、カノン先輩なら血筋なんて出さず、校則に則った方法でいく
だろうから、そこは心配しなくてもいいかな?」
「そうですね...。これだけの事を仕出かしていますから、決闘の
申し込みは難なくと通るでしょうし...」
そう...ここはあくまでも実力主義な学園なので、理にかなった理由ならば、
野良決闘に関しての校則違反は、特に何も記述はないのだ。
「それじゃ、あの馬鹿な2年生達の話はここまでにして...今日は取り敢えず、
この本に載っている回復魔法の練習でもしようか、クーナさん♪」
俺はベンチの下に置いておいたリュックの中から、回復魔法の本を
取り出して、クーナさんに見せる。
「あ...それは良い考えですね!何とか頑張って、今度のクエストまでには、
初期魔法ヒールくらいは覚えたいですね!」
「そうだね...。次こそはスマートなクエストをこなす為に頑張ろうね!」
「はい!頑張りましょう、コウ君!」
俺とクーナさんは今度のクエストに向けて、意気込みを見せる様に
お互い、天に拳を突き上げて気合いを入れるのだった。
その頃......
「ん...あのブタ野郎...。一体、どこに姿を隠しているんだ...」
カノンがムゲ達の行きそうな場所を転々と探すものの、未だにその姿を
見る事ができないでいた。
「ん...残すは...あそこしかないか...」
カノンはそう言って、学園の屋上を見上げる。
◇◇◇◇◇◇◇
「クソ...クソ...クソがぁぁぁっ!何なんだ、あのふざけた
クラスはよぉぉぉっ!!」
「ム、ムゲ様!そ、そんなに叫んだら、治した傷が響くでヤンスよ!」
「そうでゲスよ!やっと魔法で傷をふさいだばっかりなんでゲスから!」
コウのクラスメイトや、ナナ...そしてラールに心も身体もボコボコに
されたムゲが、納得いかんと苛立っていた。
「覚えておけ!この怪我が完全に癒えたら、今度こそカノンを俺の女に
してくれるわ!ギャハハ―――アガァッ!!?」
全く懲りていないムゲが、顎が外れそうなくらいの高笑いをすると、
やっと治った身体の傷口がパカッと開く。
「イデデデデテテェェェ――――ッ!!!」
そのあまりの痛さにムゲが地面をコロコロと転がると、その痛みに
堪えきれず、のたうちまわる。
そんな喜劇をしているムゲ達を今に成敗せんと、カノンが学園内に入り、
屋上へ続く階段をドンドンと駆け昇って行く。
そして学園の階段を昇る事、数分後...
「そこかぁぁぁぁ―――――っ!!」
カノンが学園の屋上のドア前まで辿り着くと、その勢いのまま、屋上の
ドアを思いっきり叩き開けて、屋上へと飛び出して行く。