97話・俺、馬鹿な2年生を語る
「ちょっと待って下さいカノン先輩!あのムゲの野郎の所へ行くなら、
俺も一緒に行きます!」
「これは私の不始末...なので、これ以上キミの手を煩わせるワケには
いかない...。だから、あいつの始末は私だけにやらせては...くれまいか!」
真面目な口調でカノンがそう発すると、コウに頭を垂れて嘆願してくる。
「カノン先輩...。ハァ...その目はこれ以上言っても無駄な様ですね。
わかりました...ここはカノン先輩に全て託します!」
俺はしょうがないという諦め混じりのため息を吐いて、カノン先輩に
一緒について行くのをやめる。
「ふ...スマンな、コウ」
「その表情で頼まれたら、もう何も言えませんよ。でも気をつけて
行ってきて下さいね、カノン先輩!」
俺はカノン先輩に笑顔は見せるものの、心配の眼差しで見送りの
言葉をかける。
「そんな心配そうな顔をするな、コウ...。ちゃちゃっと行って、
あのブタを片付けてくるから...。それじゃ、行ってくるっ!」
カノンが自信満々のサムズアップをコウに見せると、体育館の出入りへ
ダッシュし、体育館の外へと消えて...
行く前に...
「あ、クーナちゃん、私がいない間...イチャイチャ禁止だから...ね!」
カノンがクルッと身体を回転させて、クーナに人差し指を突きつけると、
イチャイチャ禁止を言い渡す。
「はは...了解しました♪」
「うむ...。では、改めて...行ってくる...ぞっ!」
クーナの言葉を聞いて安堵したカノンが、コウ達二人に敬礼をすると
猛ダッシュで体育館の外へ駆けて行く。
「ほえ~見て下さい、コウ君。カノン先輩...もうあんな所にいますよ...」
「ほ、本当だ...。迷いのないカノン先輩の行動の速さは、尋常じゃないね...」
体育館の出入りから見えるカノン先輩の姿が、既に小さい豆粒の大きさくらい
遠くにいる事に、俺とクーナさんはお互い顔を見合せ、感心の喫驚を浮かべる。
「それにしても、さっきコウ君がカノン先輩に話していた2年生の人達って、
一体なにを考えてそんな横暴に出たんでしょうね?もしそれがバレてしまったら、
問答無用で重い罰則をくらっちゃうのに...」
意味のわからない行動を取るムゲ達に、クーナは困惑した表情を見せて
首を傾げる。
「う~ん。あいつら、行動も馬鹿だったけど...見た感じも馬鹿丸出しだったし、
多分、罰則の事は頭から抜けてたんじゃない?」
「え...!?に、2年生なのに、そんな短絡的な行動だったんですかっ!?」
コウが淡々と語る、あまりにもお粗末な考えのムゲ達に、クーナが目を丸くして
驚きを隠せないでいた。




