96話・俺の彼女の憤怒
コウやカノンの事で、クラスの中がてんやわんやになっていた
その頃...
「ん...どうした、コウ?そんな如何にも何かありましたっていう、
イライラ顔は?」
特訓中、ずっと激おこ状態のコウの事を心配したカノンが、困惑した
表情で声をかけてくる。
「そ、そんなにイライラした顔をしてましたか?き、気のせいですよ、
カノン先輩の気のせい!」
「なんだ...コウ。この私に...彼女である私に、隠し事をするつもりなのか?」
「い、いえ...そう言う訳じゃないんですが...」
動揺しながらも懸命にとぼける俺の顔を、カノン先輩がジト目で
ジィィーッと見てくるので、思わず後退りする。
「じゃあ、話すのだ。そんな顔を見ていると、こちらとしても辛くなって
くる...。恐らく、私を巻き込まない為なんだろうが...そういう事は
一緒になって悩みたいんだ...。私はキミの...コウの彼女なんだから!」
「カ、カノン先輩...もう、わかりました!話します...話しますから、
そんな悲しそうな顔をしないで下さい!」
悲しさの混じった真面目な面持ちで、訴えかけてくるカノン先輩に
根負けした俺は...
「実はですね、今日の昼前にこんな事がありまして...」
今日、図書館で起きたムゲとの会話を包み隠さず、全てカノン先輩に
話して聞かせた.....
◇◇◇◇◇◇◇
「なるほど...小太りで口の悪い、貴族モロ出しの2年生...そしてそれに
従う二人の手下...。うむ、間違いない...そいつはムゲの野郎だな...!」
カノン先輩が苦虫を噛み砕いた様な表情で、ムゲの事を口に出す。
「ムゲ...?嗚呼!ハイハイ、そんな名前だった気がします!」
あの連中...あまりにも馬鹿丸出しで、あれを相手にしたら、絶対に
何かしらの面倒事になるのが目に見えていたから、思いっきし
ガン無視したんだよな...。
でもやっぱり、カノン先輩を巻き込むくらいだったら、あの時に
有無も言わせず、力の限りぶん殴っておけば良かった!
嗚呼!もう、クソッ!!
「ハァ...しかしあのブタ野郎、あれだけボコボコにしてやったのに、
まだ諦めていなかったとは......」
苛立っているコウから、ムゲのやらかした事を全て聞いたカノンが、
深い溜め息を吐いて、コウと同じくかなりイラッとした顔に変わる。
「しかも寄りにも寄って、私のコウにちょっかいを出すとは...もう完全に
堪忍袋の尾が切れた...!許さん、許さんぞ...あのブタ野郎ぉぉぉっ!!」
メラメラと瞳が燃えてい怒りを露にしているカノンが、腰に下げていた
白銀の槍を静かに手に取った。
「よし、今日の特訓はここまでだ、コウ、クーナちゃん!私はちょいと
用事ができてしまったのでな...後は自主トレでもやっていてくれ!」
そして、コウとクーナへ敬礼をビシッと決めてそう告げると、体育館の外へ
猛ダッシュで駆けて行く!




