94話・俺の幼馴染の恋人
「ム、ムゲ様ぁぁぁっ!」
「だ、大丈夫でヤンスかぁぁぁっ!?」
窓から落ちるのを見ていたムゲの手下が、慌てて窓へ駆け行き、
落ちていったムゲの様子を確認する為、窓を乗り上げて下を見ている。
「あ、ラール君じゃない!今、職員室から戻ったんだ?」
ムゲを蹴り飛ばした人物...ラールにナナが気づく。
「はは...ナイッチェ学園との意見を纏めた資料を説明するのに、
ちょっと時間がかかっちゃってさ!」
ニコッと微笑みを浮かべるナナに、ラールも同じ笑みを浮かべて
返事を返す。
「貴様...よくも、よくもムゲ様をこんな目に合わせたでヤンスね!
至急、学園長に掛け合って告訴してやるでヤンスからな!」
ラールとナナの会話を邪魔する様に割って入ったテッカが、額に青筋を
立てて、突き出した人差し指をブルブルと震わせる。
「このボクを告訴?ふふ...面白い冗談だね、先輩♪」
「冗談じゃないでヤンス!」
「まぁ...どうしても告訴するというのなら、どうぞお好きに。但し、
『これ』を確認して、尚その言葉が出るというのなら...ですけどね!」
ラールが魔法を詠唱すると、四角い塊が手のひらの中に現れ、それをムゲの
手下、テッカへと放り投げる。
「なんでヤンスか、このキューブは...?ハッ!?こ、これは記憶魔法の!?」
情報魔法を使うテッカが、その塊の正体に気づく。
そしてそれを急ぎ再生すると、先程ムゲが脳内で企んでいた、計画の全てが
記憶されていた。
「こ、これは...この記憶情報はっ!?」
「そういう事だから、わかるよね?もし、これ以上このクラスにちょっかいを
出すなら、それを学園長に渡しちゃいます...いいですね、先輩♪」
ムゲの脳内記憶情報を聞いて驚愕するテッカに、ラールが威圧感タップリの
微笑みを見せて釘を刺す。
「ぐぬぬぬ...!ク、クソ...覚えていろでヤンスよ!」
「絶対、どこかで仕返ししてやるでゲスからねぇ!」
ラールの威圧感に負けたムゲの手下達が、負け惜しみを吐きながら、
慌ててクラスから出ていった。
「本当、騒がしい人達だったね。あれで2年生だなんて...あの学年の
お里がしれてくるよ...」
逃げ去って行く2年生を見て、ラールが溜め息まじりの表情で
やれやれといったポーズで呆れかえってしまう。
「ねぇ、ねぇ、ラール君。さっきあいつに渡していたあの四角い
キューブみたいなのって、一体なんなの?」
苦笑をしているラールに、さっきテッカに手渡した謎のキューブが
とても気になっているナナが、その事を聞いてくる。
「ん...あのキューブの事かい?あれはね......」
ハテナ顔で問うてくるナナに、さっきテッカに手渡したキューブの
詳しい説明をラールがしてくる。




