90話・俺の幼馴染がクラスに帰還する
「それにしてもまだいたんだ、こんなコテコテに貴族の名を振りかざす
馬鹿が...」
「だね。それにコウ君に用って、どうせカノン先輩柄みなんでしょう?」
「ハァ...だったら、直接カノン先輩に言えばいいのに...それができない
分際で、コウ君の方にくるとは...」
「あ、わかった!さっきみたいな威圧感な態度で「カノンと別れろぉぉ!」
...とか言ったんじゃないの?」
「うわ、ダサ!めちゃくちゃダサ!イヤ...ダサいというか、キモッ!!」
ムゲがここにいた理由をズバリ当てた女子生徒達が、そのあまりにも
キモい行動に、蔑みの目線を向ける。
「ぐぬぬぬぬ...こ、こいつら、黙って聞いていれば好き勝手にペラペラと...
もう、許さんぞぉぉぉぉっ!!俺様のパパの力で貴様ら全員、奴隷市場に
叩き売って―――うぎゃあああぁぁっ!!!」
教室の入り口でギャーギャーとほざいているムゲを思いっきり後ろから
蹴り飛ばして、誰かが教室の中に入ってきた。
「ったく...何なの今の物体は?やっとあの窮屈なナイッチェ学園から帰って
来てみれば、人の教室で物騒な事を大声で...!」
「あ!ナナじゃん、ナイッチェ学園から帰ってきたんだ!お帰り♪」
「うん、ただいま~♪」
自分にお帰りの挨拶を述べてくる女子生徒に、ナナがニコッと微笑んで
ただいまの挨拶を交わす。
「でも帰ってくる予定の日より、かなり遅かったね?なにかあったの?」
数日遅れて帰ってきた事を女子生徒が不思議に思い、それをナナに
聞いてくる。
「はは...それが、あっちの学園の生徒達って色々と面倒でさ...」
「面倒?」
「うん。まぁ、正確には面倒と言うかド真面目?流石は騎士道を軸に
重んじているだけはあるというか...はは...は...ハァ」
ナイッチェ学園の生徒達の事をナナが思い出すと、思わず苦笑と
嘆息をこぼれてくる。
「お、おい!そこの女!よ、よくもムゲ様を足蹴にしやがったでヤンスね!」
「お前は誰に手をあげた...いや、足をあげたのか、わかっているんでゲスか!」
女子生徒達と談笑していたナナへ、ムゲの元へ駆け寄っていた手下達が怒りを
露にし、叫声を荒らげてイキり立っている。
「何、このゲスとヤンスは?」
「ああ、そいつらはあんたがさっき蹴り飛ばした、あれの手下よ、あれの!」
ナナの足蹴りを食らって気絶しているムゲを、女子生徒がゴミを見る様な
目をして、ちょんちょんと指を差して答えてくる。
「ん...あれ?嗚呼、あれねぇ...」
女子生徒の指先に目線を合わせると、そこにはさっき自分がぶっ飛ばした
小太りの男が伸びて倒れていた。




