09話・俺の撫で撫で
「はは...クーナさんは、痛い所をつくな...」
「はうう!?すすす、すいませんです、すいませんです!」
コウの困惑な表情を見たクーナが、顔を真っ青にしてペコペコと頭を何度も下げて
謝ってくる。
「大丈夫、大丈夫。そこまで必死になって謝らなくてもいいよ!そんな気持ちは
もう昔の話、今はとっくに吹っ切っているから!」
「で、でも...はうっ!?」
「ほらほら、落ち着いてクーナさん。俺はナナの事は気にしてない...だからね♪」
俺は笑顔を見せて、クーナさんの頭に自分の手を優しくポンッと乗せると、
その手でわしゃわしゃと撫で回す。
「コ、コウ君......はい、わかりました!コウ君がそう言うなら、私もう何も言い
ません!」
コウの優しみ含めた笑顔を上目遣いで見つめると、クーナが頬がポッと赤く
染まっていく。
「はは...ありがと、クーナさん。そのクーナさんの気遣いは本当に嬉しかった!」
「えへへ...そんな顔で言われると、なんか照れちゃいますね♪」
コウの笑顔に対し、クーナは照れた表情ながらも相好を崩す微笑みを返す。
「所で...あ、あの...コ、コウ君...」
「ん...?どうしたんだい、クーナさん?」
今見せていた笑顔とは打って変わって、急にモジモジし始めるクーナさんを見て、
俺の表情がハテナ顔になる。
「え...と、そろそろ、頭を撫でるのをやめてくれませんか...その...
み、みんなに見られて...ちょっと...恥ずかしい...ので...」
「え...?あ、ゴメン!クーナさんっ!あいつを慰める時の癖でつい...っ!」
照れて真っ赤な表情になっているクーナさんを見て、俺も顔を真っ赤にして
慌てて頭から自分の手を離した。
「あいつを慰める時の癖って...ナナさんの時にですか?」
「う、うん。気にしないで言ったのに、身体が忘れてくれないものだね...」
昔のナナって、よく泣いたり、落ち込んだりが多い少女だったので、こうやって
頭を撫でて慰めていたから、つい...反射的に撫でちゃってたよ...。
「本当にゴメンね!もう絶対にしないから許してね!」
「いいえ、許しません...」
ジト目をしたクーナが、首を横に振ってコウの謝りを拒否してくる。
「ええ!そ、それじゃ、どう謝ったら許しくれるの!?」
そのジト目を見て俺は慌てた口調を発し、どうやったら許してくれるかと、
恐る恐る聞いてみる。
「あ、謝る必要はありません!ただ、私が落ち込んでしまった時や
撫でて欲しい時に、今みたいに撫でてくれるんなら...ゆ、許しちゃいます!」
「撫でて欲しい時に撫でる?ちょっと恥ずかしいけど、それで許してくれるの、
クーナさん?」
意外な答えがクーナさんから返ってきたので、俺は照れながらもクーナさんへ
それを聞き返す。
「はい!ただし、その時は思いを込めて撫で撫でして下さいね...!
...と言うわけなので、頑張ってお願いをした私に、ご褒美の撫で撫でを
して下さい!」
照れた表情を見せつつ笑顔を浮かべたクーナが、上目遣いでコウの懐へ
ゆっくり近づいてくる。
「うん...わかった!これでどうでしょうか...お嬢様♪」
その笑顔に俺の表情も思わず相好を崩す笑顔へと変わり、クーナさんの頭を
優しく撫でる。
「エヘヘ...お嬢様はいい気分ですよ♪」
コウに撫で撫でされたクーナの表情はふにゃっと垂れて、その頬が先程より
更に真っ赤に染まると、その気分はまさに至福の中へいるような夢心地だった...。