89話・俺のクラスメイトが、2年生を窘める
「コウ・ラーディスはいるかぁぁぁぁ―――っ!!」
突如、コウのクラスに乗り込んできたムゲが、教室中に響き渡る
大声を荒らげて、コウの事を探している。
「ん...誰だ、お前?いきなり教室に入って来たかと思えば、そんな
大声を出して?」
コウの名前を荒らげているムゲに、クラスの男子生徒のひとり...
イソヒがイラッとしながら、問いかける。
「んだと、クソ1年が!2年生であるこのムゲ様に対し、何をそんな
生意気な口を聞いていやがる!ぶっ潰すぞ、ゴラァァァッ!」
ムゲもイソヒの態度にイラッっとして、威圧感タップリの叫声で
文句の言葉を吐いてくる。
「2年生ねぇ...。で、その2年生様がコウに何の用があるっていうん
ですか?」
相手が2年生と聞いたイソヒが、一応敬意を払い、敬語を含めた言葉で
ムゲとの会話を続ける。
「それをお前に教える必要はねぇだろうが!四の五のはいいから、
さっさとあいつがどこにいるか、場所を教えろやっ!」
「そうだでヤンスよ、一年坊!さっさと教えないと、ムゲ様の...
レッド貴族の怒りを買う事になるでヤンスよ!」
横にいたムゲの手下が更に追い打ちをかける様に、ムゲが誰なのかを
教えてくる。
「レッド貴族...?でもそれって、あなたの力じゃなく、親の力っしょ?」
イソヒの後ろでムゲとの会話を聞いていた女子生徒が、ハテナ顔をしている。
「そ、それなのに、自分の力と勘違いしちゃって...こいつ、滑稽過ぎで
笑っちゃうんですけど、くくく♪」
「滑稽というか、馬鹿丸出しだよねぇ...うぷぷっ!」
「おいおい、そんなに笑ってやるなよ、だって、このお方は畏れ多くも
レッド貴族様...なんだぞ...うくく、ああ、やっぱ駄目だ!俺も笑いを
抑えるの限界だぁ...あはははっは!」
イソヒとムゲ達との会話を聞いていたクラスメイトの男女が、ムゲの
あまりの坊っちゃんぶりに、笑いを必死に堪えながら会話をする。
「お、おのれぇぇぇっ!あの1年坊もふざけた野郎と思ったが、ここの連中も
同じくらいに虫酸が走る、アホ丸出しなクラスだなぁぁっ!」
とことん、自分を馬鹿にしてくるコウのクラスメイト達に怒髪天なムゲが、
ボキャブラリーのまるでない返しの言葉で、懸命に罵ってくる。
「アホ丸出しはあんただよ、あ・ん・た・っ!」
「そうそう...大体、忘れているんじゃない?この学園にて家柄の圧力を
かける行為は全面的に禁止行為だって事をさ!」
「これはこの学園のスポンサーであるランスロッドが決めたルール...」
「つまり、そのルールを破る行為...特に貴族が破るという事は、トップに牙を
向けたの同じなんだけど?」
「その意味...わかってるのかな、ブタ野郎さん?」
ムゲ達のアホさ加減にうんざりな女子達が、人差し指をビシッと突きつけて、
蔑んだ表情や憐憫な表情を、向けられるムゲ達だった。




