88話・俺、取り敢えず教室へ戻る
「.........」
俺は静かに席を立つと、そのまま図書室をドアへ足を向けて歩いて行く。
「ふふふ...それでいい。俺様の怒りを買いたくなかったら、さっさと
行ってこいや!」
小太りな男...ムゲの下品な叫声を背中に受けて、コウはそのままドア開けて
廊下へ出て行く。
そして、しばらく歩くとコウのクラスへと辿り着いた。
「あ、コウ君、どこに行っていたんですか?探したんですよ?」
教室に入るとクーナがコウに気づき、トコトコと駆けて近寄ってくる。
「はは...それはゴメンね、クーナさん。ちょっと、図書室で調べたいものが
あってさ♪」
「そっか、図書室に行っていたんですね。それでその調べたいものは
見つかったんですか?」
「うん、ほら!これだよ♪」
クーナさんの問いに俺はニコッと微笑みを見せ、図書室から借りてきた
本を見せた。
「えっと、何々...誰にでも出来る...初歩回復魔法の覚えかた...ですか?」
「はは...この間のポイズンベアとの戦いで、回復魔法がないとかなり辛いのを
実感したしね...」
俺はあのクエストでの戦いを思い出すと、あまりの不甲斐なさに苦笑して
しまう。
「それを言うなら、私もですよ...」
「なら頑張って、二人で回復魔法を覚えちゃおうか!」
「はい、そうですね!今度のクエストではカノン先輩に迷惑をかけない様に
しなきゃですね!」
コウの言葉を聞いてクーナが、この間の戦闘がカノン便りだった事を
思い出すと、次はしっかりするぞっとその拳に力が入る。
「ん...所でコウ君?なんか、ちょっと怒ってませんか?」
「え...怒ってる?俺がかい?別にそんな事はないけど...?」
俺はふいに図星をクーナさんに突かれて、少し心臓がドキッとする。
「そう...ですか?それなら、いいんですけど...」
「はは...なんか、心配かけてしまったみたいでゴメンね!」
「いいえ、いいえ!勘違いならいいんですよ!あはは♪」
コウの謝りに対し、クーナが慌ててニガ笑いを返す。
ハァ...こんなにイライラするんだったら、面倒事とか思わず、
あの豚野郎を思いっきり、ぶん殴っとくべきだったかな......。
俺がそんな無念な考えをしていると、次の授業を知らせるベルの音が
耳に聞こえてきた。
◇◇◇◇◇◇◇
「ぐぬぬぬ...遅い...遅い過ぎるぞ!あの1年坊は何をやっていやがるんだ!
このムゲ様をこんなに待たせやがって!」
いつまで経ってもやってこないコウに対し、イライラ全開のムゲが
貧乏揺すりをして待っていた。
「あ...授業のベルがなったでヤンス!」
コウが待てども、待てども、全く現れず、とうとう次の授業を知らせる
ベルの音が図書室の中で鳴り響く。
「あ、あの野郎!逃げやがったな!お、おのれ...許さんぞぉぉぉっ!!」
1年生の平民に小馬鹿にされたムゲが、血管が切れそうなくらいに顔中を
真っ赤に染め上げて、怒りを露にするのだった。




