85話・俺のお姫様抱っこ
「それに大体ですよ、私とコウ君はそんな事を気にしない関係...
最高な底辺コンビだったでしょう!」
「うん、そうだったね。俺とクーナさんは最高な底辺コンビだった
よね!」
クーナの表情が先程とは打って代わり、少し激おこになってしてくる説教に、
俺は微笑みを浮かべて返事を返す。
「ん...んん!なんだ、なんだ!その熱々なラブラブ視線は...?ハッ!?
まま、まさか、コウにクーナちゃん!わ、私がいない間に、何か疚しい
イチャイチャをやらかしたのではあるないなっ!?」
目の前で二人が敬愛な視線を送り合っている姿に、カノンが目を丸くして
やきもちな疑いをしてくる。
「い、疚しいイチャイチャってなんですか、カノン先輩!そんな事するわけ
ないじゃないですか!」
「そ、そうですよ、カノン先輩!クーナさんの言う通りです!」
「本当か...?リアリーかぁ...?」
クーナとコウのあわあわと慌てふためく姿を、膨れっ面でジィィーと
カノン先輩が見ている。
「ほ、本当ですって!あんな状況でイチャイチャなんてできませんから!」
「そ、そうですよ!逃げるのに必死で、そんな事をしている暇な......あ!」
コウに続いてクーナも否定の言葉を口にしようするものの、途中でふと何か
思い出したのか、その顔を真っ赤に染め上げる。
「ん...?ど、どうした、クーナちゃん!何故に顔を真っ赤に染める...??
嗚呼!やはり、何か疚しい事をしてしまったのかっ!?」
「ち、違います、違います!ただ...コウ君からお姫様抱っこされたな~って
思っただけですから!キャッ!恥ずかしいです!」
その時の状況を鮮明に思い出したクーナが、更に顔を赤くしてその場を
ピョンピョン飛んで、恥ずかしがる。
「お、お姫様...抱っこ...だと......!」
カノンが目の前でキャーキャー言っているクーナを、とても羨ましげな
顔で見ている......
そして、その顔をゆっくりとコウに向けた。
「はう!?な、なんですか、カノン先輩!その悲しさ全開の表情は!?」
「私にも...」
「へ...?」
「私にも...姫様抱っこ...しろ!」
カノンがプクーッと頬を膨らませて、両手をコウに向けて突き出してくる。
「え...!?あ、あれは、あの状況だから、できた感じで...地でやるとちょっと
照れると言うか、恥ずかしいと言うか...」
「なるほど...コウはそんな彼女差別をするのか...ふ、悲しいな...」
カノンが憐憫な瞳で、遠くの方をジィィーと見つめている。
「はう!?や、やります!やりますから、その顔は勘弁して下さい!」
カノン先輩の今にも死にそうな表情を見て、俺は動揺全開に慌てて、
速攻でお姫様抱っこをカノン先輩にするのだった。




