77話・俺の一か八かの賭け
「グァワァァァ――――ッ!!」
「コウ君、避けてぇぇ!」
「ちぃぃぃっ!?」
クーナさんの指示を聞き、俺は素早くポイズンベアの猛毒攻撃を避ける!
「ハァ...ハァ...ハァ...。く、くそ...これは想像以上に厄介だな!」
これで何度目になるかわからないポイズンベアの攻撃を避け、俺の呼吸は
もう限界と言わんばかりに乱れてくる。
「ギルワァァァァァ―――ッ!」
愚痴をこぼしていると、間も入れずにポイズンベアが、次の攻撃を
コウの頭上へ叩き込んでくる!
「くぅぅ......ま、またかっ!?」
それに気づいた俺は、思いっきり横っ飛びしてギリギリで回避する!
「く、取り敢えず...距離を取って...ハッ!タッ!」
動かない身体を強引に動かし、ポイズンベアに背を向けない体勢で
ジャンプしながら後ずさりして距離を取る。
「ハァハァ...よし、今だ!」
何とかポイズンベアから距離を取った俺は、マジカルリュックから
素早くポーションを取り出し、口に運ぶ!
「ふう...これで少し体力が戻った!」
ゼーゼーと肩で息をしていた俺だったが、ポーションを飲むことで
この息切れは、何とか回復した。
「クーナさん、ブースターの魔法は後何回いけそう?」
「攻撃魔法用のMPを計算に入れて...恐らく、後1回分で限界です!」
「後、1回か......」
それで、いけるか...?
イヤ、無理だろう......。
なら、答えは1つ!ブースター効果で能力を上げる...そして全神経を使って
ここを全力で離脱する...それしかもう方法はないか......。
「それじゃ、クーナさん、今から行う作戦を聞いて下さい。まず、クーナさんの
ブースター魔法の効果で俺がポイズンベアに突撃し、あいつに一撃を入れて
隙を作ります!」
「はい...!」
「そして怯んだその隙をついて、全力でカノン先輩の待っている森の入り口へ
向かう為、ここを離脱します!」
これはブースターの効果が切れる前に油断なく、事を進めなきゃいけない。
もし、途中でブースターの効果が切れたら、即終わりだからだ!
「ブースターの効果は大体、5分が限界...。それまでにこの森を脱出する...!
これでいきますから...!」
「はい...ここはコウ君に私の運命の全てを託します...」
コウの言葉にクーナが静かに首を縦に振って、全てを委ねる。
「ううん、それは違うよ、クーナさん。これは二人の力を以てやるんだ...。
俺がクーナさんの為に、クーナさんが俺の為に...どちらかが欠けても駄目
なんだ!」
「コウ君......。はい!私の力...コウ君の為に使います!だから...!」
「おう!俺もクーナさんを守る為、全力を越えた力で頑張るよ!」
相好を崩す笑顔を見せるクーナさんに、俺も屈託のない笑顔を浮かべて返す。




