76話・俺、完全に八方塞がり
その頃......
「ん...この気配、魔物の威圧が全く感じないぞ...?一体どういう事だ?」
コウとクーナを見送って幾時間が経った時、月光の森の出入り口で
二人の帰りを待っていたカノンが、森の異変に気づく。
「この感覚...前にも出会った事があったような...?確か、この気配の
感覚は...」
カノンが神妙な面持ちで顎に手を添えて、思考を働かせる......。
「ハッ!思い出した!この感覚はユニークモンスターの出現フラグ!?」
カノンがこの感覚の正体に気づくと、額に冷や汗が滲み出てくる。
「これは...ちょっと...イヤ、かなりヤバいな。急いでコウとクーナちゃんと
合流しないと二人の身が危ない...ぞ!」
カノンが眉にキッと力をいれると、コウとクーナのいる場所へとダッシュで
かけて行く。
◇◇◇◇◇◇◇
「.........」
「.........」
「グルルル......ッ!!」
「ねぇ、コウ君...あのポイズンベア、他のポイズンベアよりデカイね...」
「う、うん...。いつもの2倍はあるね、このポイズンベア......」
対峙しているポイズンベアを下から見上げる俺は、クーナさんの
言葉に対し、相づちを打つ。
「それに毛並みが怖いくらい、真っ赤っかだ...」
「そ、そうだね。血を浴びた様に真っ赤な毛並みだね......」
あの身震いする様なポイズンベアの深紅な毛並みを見て、クーナさんの
言葉に再び相づちを打つ。
「ねぇ、コ、コウ君...こ、この二つの特徴って、学園で噂の立っている
ポイズンベアと......」
「うん...あの噂の特徴と完全に一致だよ、このポイズンベアは!」
「つまり...こいつが...」
「「あのユニークモンスター!!?」」
俺とクーナさんは、学園へ噂になっている凶悪なポイズンベアの特徴を
思い出し、そして目の前のポイズンベアがそれと完全に一致した。
「出会いたくないと思った時に出会っちまう...本当に参るね...」
立たなくていいフラグが立った事に、俺は思わずニガ笑いをこぼす。
「でもどうします、コウ君?逃げようにも、直ぐに追いつかれてしまう
可能性が大きいですよ!」
コウの隣にいるクーナが、神妙な面持ちで今の状況に困惑する。
「クーナさんの言う通りだろうね...。僕達のLVじゃ、掴まって殺される
未来しか見えないよ...」
クーナさんの言葉を聞いて、僕は静かに首を縦に振った。
「く...戦ってもダメ、逃げてもダメ...これは完全な八方塞がりか...」
僕は今の危機状況に、冷や汗がドンドンと流れ落ちていくのだった。




