71話・俺の新たなる得意武器
「ええぇぇ!技も使えず、棍棒の氷技も使えず、挙げ句に武器もないって...
これでどうやって戦えっていうんですか、カノン先輩――っ!」
俺はゴブさんの棍棒をブンブンと振って、カノン先輩に無茶振りだと
直訴する。
「安心しろ...取り敢えず、コウの新たな武器はちゃんと用意してある!」
そう言って、カノンがマジカルポーチへ手を突っ込んでゴソゴソと
何を探している......
「ん...あった、あった...。この武器が、今からコウの新たなる
得意武器だ...!」
そして、その武器をコウへ手渡した。
「へぇ...何か変わった形ですね、これ?」
俺はカノン先輩から手渡された剣らしき武器を鞘から引き抜き、
抜いた剣をジィィーと眺める。
「これが...剣?」
う~ん、それにしては片刃だし...何か、見た目も細いし?
「それは刀と言ってな、異世界の『チキュウ』と呼ばれる世界の技術で
作られたという中々の逸品なんだぞ!」
「刀...ですか?」
これが異世界の『チキュウ』の武器......。
何だろ...この胸に響いてくる素敵な感情は......?
いや...わかっている!
この感情は、男の心の内にある...謎の武器を装備する自分カッコいいっ!
...だっ!!
「ん...どうした、黙りして?もし、それが気にいらないなら...やはり私と
一緒の槍を――」
「おおぉぉ――っ!異世界の武器...刀!なんというロマンな響きぃぃっ!!」
俺は異世界の武器と言う名に目をキラキラと輝かせて、手に握っている刀に
心を奪われてしまう。
「ん...どうやら、気に入ってくれたようだな!」
「はい!何かわからないですけど、いいですね、この武器!」
「うむ、それじゃ...その武器で私やクーナちゃんを守ってくれたまえ!」
「了解です、カノン先輩!」
俺はカノン先輩とクーナさんの前で、ビシッと敬礼をして守護の誓いを
立てる。
...と言うわけなんだ...浮気性な主人でスマンな、我が『元』相棒...
ゴブさんの棍棒...。
俺はパチンッと手を合わせて謝ると、ゴブさんの棍棒をマジカルリュックの
中へ静かにしまい込んだ。
「よし...みんなの武器の確認もすませたし、いよいよポイズンベア退治に
月光の森の中へ入るぞ!」
「はい!わかりました、カノン先輩!」
「こっちも準備はできています、カノン先輩!」
カノン先輩の号令に、コウとクーナがビシッと敬礼を返すと、その足で
月光の森の中へ入って行く。