66話・俺が右往左往
カノン先輩とクーナさんとのイチャイチャからしばらくした時間、
俺達は今ポイズンベアの生息している月光の森に来ている。
「月光の森か...。イヤ~ここに来るには久しぶりだな!」
「ん...なんだ、コウ?この森に来た事があるのか?」
俺が懐かしさに浸っていると、横にいたカノン先輩が声を
かけてくる。
「え...ああ、はい。さっきも言いましたけど、クエストで
この森にはナナと一緒によく来た事があるんですよ!」
「ほほう...あの幼馴染ちゃんと...?」
「こんな暗い森に、二人っきりでですか...?」
コウがナナの話をすると、カノンとクーナの二人が眉をピクッと
動かし、静かにコウの顔をジト目でジィィーッと見つめてくる。
「ど、どうしたんですか、二人とも?その寒い視線は!?」
「いやなに...こんな雰囲気の場所で、幼馴染ちゃんとイチャイチャな
展開にならなかったのかと思って...な」
カノンが目を細めた表情を見せながら、やきもちな言葉を述べてくる。
「ナナとイチャイチャな展開!?そ、そんなのある訳ないでしょう!」
「本当ですか?その慌てよう...少し、怪しいですよ~?」
少し動揺を見せるコウに対し、カノンの隣にいるクーナが更にジト目で
威圧しながら妬いている。
「本当だって!第一、もしそんな事をしていたとしたら、ナナの奴と
今のような関係にはなってないから!」
「う...た、確かに......」
必死に正論を訴えるコウの言葉を聞いて、これは嘘じゃないなとクーナが
後退りする。
「それにあの頃の俺って、この森の魔物と戦うには少々LVが足らなくて、
敵から逃げる為に右往左往してて、それ所じゃありませんでしたし...はは」
当時の俺は、戦闘を完全にナナ任せで、何もしていなかった事を思い出し、
このヘタれた姿も振られた原因の1つかなっと、思わずニガ笑いが洩れた。
「...とまぁ、そういうわけです...。わかってくれました、二人とも?」
「むむ...スマンな、コウ。キミの気持ちを考えてなかった...許せ!」
「わ、私もすいません、コウ君。ちょっと、やきもちを妬いちゃって...」
コウへの誤解が解けた二人は、疑った事を恥じる様にキレイな角度で
頭を下げて謝ってくる。
「ちょっと、二人とも!?そ、そんなにかしこまって謝らないでよ!
こ、恋人として、そういうのが気になるのは、俺もわかりますから!
そ、それに...妬かれるのって、とっても嬉しいですしね...へへ♪」
俺は必死に謝ってくるカノンとクーナに対し、彼氏としてやきもちを
妬かれる事が嬉しく、その頬を赤くなって目尻が下がるのだった。