63話・俺の受けたクエストをキャンセルすると...
俺とカノン先輩が、選んだクエストの事で困惑してると、先に受付に
行った二人の元へ、クーナさんが駆け足で近づいてくる。
「もう~コウ君にカノン先輩、私を置いてきぼりにしないで下さいよ~!」
「あ、ゴメン、クーナさん!あのみんなの視線から逃げたくて...」
「それはわかりますけど...。...ん?それは、クエスト受理書ですね?
一体、何のクエストを受ける事にしたんですか?」
クーナがブゥーッと頬を膨らませていると、目線にクエストの受理書が
チラッと見えたので、それが何のクエストなのかコウに聞いてくる。
「それがな、クーナちゃん......」
カノンがコウの代わりに、受けたクエスト依頼内容の説明をする......。
「ふえええぇえっ!?い、今噂のポイズンベアの依頼を受けちゃったん
ですかぁぁっ!?」
クーナもポイズンベアの噂を知っていたらしく、その目を大きく見開いて
驚き全開の叫喚を荒らげる。
「お、おい...今の聞いたか?」
「ああ、聞いた、聞いた!今噂のポイズンベアの依頼を受けたと
聞こえたぞ...!」
「これだけ噂が流れているのに、まさかあのクエストをやろうとは...
正気なのか、あいつ...!?」
コウの受けたクエストを、信じられないといった表情で回りの生徒達が
困惑している。
う、うっさい...!こうなったのも、そもそもお前らのせいなんだぞ!
責任を取れよ、責任をよぉぉっ!?
俺は思わず、そう叫びそうになるのをグッと堪えて飲み込み我慢する。
「く...こうなったら、キャンセルをするしか、道がないか......」
「イヤ...やらない方がいい。何故ならそれをやるとペナルティを
受けてしまい、この先1ヶ月クエストを受けられなくなる...。
それは...この先の特訓を考えると、かなりの痛手を食う羽目になる...」
コウがキャンセルしようとするが、カノンが真面目な顔でそれを拒否し、
その理由を淡々と述べる。
「それに依頼評価数も下がっちゃいますしね...」
そして、キャンセルをしちゃ駄目な、もう1つの理由をクーナが口にする。
そうだった...。
クエスト依頼のキャンセルは、一応できる事はできるのだが、それをすると
カノン先輩の言う様に、ペナルティで1ヶ月クエストを行う事ができなくなる...。
更にクーナさんの言う様に、キャンセルや依頼の失敗等をすると、
ランクアップの為のポイント、評価数が激減するのだ。
「で、でも、俺の失敗でカノン先輩やクーナさんを危険な目に合わすワケには
いきませんから......」
「ふ...彼氏よ、この私を舐めてくれるな...。これでも、2年のトップエースだぞ!
そんな、ポイズンベアのユニーク如きに遅れは取らない...!」
カノンがフフンッと自慢気な口調を発し、人差し指を蒼井にビシッと突き出すと、
ふんぞり反ってドヤ顔を決める。
「キャァァァ―――ッ!カノン先輩、素敵ぃぃぃ―――――ッ!!」
もう、何てたよりがいのある貫禄を醸し出していらっしゃるんですかっ!
カノン先輩のドヤ顔が何故か神々しくも輝いて見えて、思わずその口から
陶酔の声を荒らてしまうのだった。




