56話・俺の改めた告白
俺に抱きつき泣いているクーナさんを見て、クラスメイト達が
空気を読んだのか、取り立てて何かを言ってくる気配もなく、
ただ、茫然といった表情でこちらを見ている。
嫉妬や罵倒的なものというより、興味が勝っているこの熱い視線...
イヤ、熱過ぎて肌に突き刺さる様な痛々しい視線だな...はは。
「あ、あの...クーナさん、どうですか?少しは落ち着きましたか?」
俺はこの痛々しい視線に晒される中、取り敢えずクーナさんを
落ち着かせる。
「ぐす...はい...なんか、泣いちゃってすいません!」
「いいんですよ。寧ろ謝るのは、クーナさんの気持ちを汲めなかった
俺の方なんですから!」
クーナさんの瞳に自分の瞳を重ね合うと、俺はクーナさんにペコリと
頭を下げる。
「そう言えば、あの試験の時に約束してたっけ...。クーナさんが慰めて
欲しい時にはこうやって頭を撫でて欲しいって...」
「わ...コ、コウ君っ!?」
コウがニコッと微笑むと、クーナの頭にポンッと手を置き、そのまま
優しく頭を撫でていく...。
「コウ君......」
頭を撫でられる感触にクーナの頬がフニャッと緩むと、コウの事を恵愛な
表情をして見つめてくる。
「は、はう!?そ、そうでした!あ...!?す、すいません!コウ君の
制服に色々...染み的なものをつけてしまって!?」
コウの胸に抱きついていたせいでついた、自分の涙の跡等に気づき、
ペコペコと頭を何度も下げて謝ってくる。
「いいって、いいって!だって、クーナさん...彼女の涙の跡でなんか
怒りやしないって♪」
「か、彼女っ!?」
彼女と呼ばれてクーナは照れてしまったのか、顔からボンッと音が
鳴りそうなくらいに、表情を真っ赤に染め上げている。
「そう言う訳だから...そんな事を気にするのはヤメヤメだよ♪」
「キャッ!」
コウが自分の懐へクーナを引き寄せると、再び落ち着かせる為に頭を
優しく撫でていく。
「ねぇ、クーナさん...」
「ん...なんですか、コウ君?」
自分を真面目な顔でジィィーっと見つけてくるコウに少し戸惑うも、
クーナも真剣な表情でコウを見つめる。
「今、俺達に刺さってくる視線の数々を感じますか?」
「あ...はい、恥ずかしいくらいに見られてますよね...」
コウと抱き合うような形になっているので、クラスメイトの視線は
見えてはこないが、その背中に何か熱いヒシヒシとしたものを、
クーナは感じている。
「多分、俺の彼女でいる限り、この視線をこの先もいっぱい受ける羽目に
なると思うんですよ...」
「......」
「その中には蔑んだ目をしてくるものや、下卑た事で罵ってくる連中も
沢山いるでしょう...」
「......」
「中には物理的な事をしでかしてくる輩もいるかもしれない......」
「......」
「それでも俺の彼女に...ううん、俺がキミの彼氏になってもいいですか?」
俺は先程と同じ様にクーナさんの瞳をジッと見つめながら、改めて恋の告白を
クーナさんへする。
「コ、コウ君...はい!こちらこそよろしくお願いします!」
コウの改めた告白を受けて、クーナが相好を崩す笑顔を浮かべると、コウの懐へ
勢いよくガバッと飛び込んで、そしてそのままギュッと強く抱きしめた。




