53話・俺のクラスの質問
「しかし、あのカノン先輩がコウの彼女か...」
自分の前で漫才をやっているコウとカノンを見ているイソヒが、
コウがナナに振られた時の事をふと思い出す。
「でもよ、ナナに振られた時はあんなに死にそうな顔をしていたのに、
気づけばそれを乗り越えてカノン先輩を彼女にしているとは...
ふ...まだ運が残ってて良かったな、コウ!」
ナナに振られ、喪失感たっぷりだったコウの姿を思い出したイソヒが、
今のコウの状態を喜んでくれている。
「イ、イソヒ......」
「しかしここで運が枯れ果ててカノン先輩と別れたとしても、みんなには
自慢しまくれるな!俺はカノン先輩の元カレ様だったんだぞってな♪」
イソヒがニカッと歯を光らせると、コウに向かってサムズアップしてきて
縁起でもない事を口走ってくる。
「ん...残念だが...私はそれ自分で言う気は更々ない。そして例えコウに
それを言われたとしても...私は断固その言葉に拒否を唱えるぞ...!
コウはお前は私のモノだとな...!」
そう高らかに宣言したカノンが頬を染めると、コウの腕にギュッと
寄りかかる。
「「「「おおおぉぉぉ――――ッ!?」」」」
それを見たクラスメイト達が、1人は嫉妬を越えた尊敬、1人は羨まし顔、
1人はただその行為に吃驚仰天といった感じに、それぞれが生徒達が感情を
モロに出してコウ達に歓喜の声を上げている。
「......コウ君」
そんな歓声の中、クーナが二人の横で小さくなって、それを佇んで
見ていた。
すると、そんなクーナの元に......ひとりの女子生徒がトコトコと移動し、
近づいて来る。
「あ、あの...クーナさん!私からも、その...クーナさんへ質問しても
いい...かな?」
「はにゃ!?わ、私ですかぁ!?」
コウとカノンの横で小さくなっていた自分に、まさかお声がかかるとは
思っていなかったのか、クーナが目を丸くして驚いてしまう。
「あのさ、クーナさんもさっきの会話でコウ君の彼女とか言っていたと
思うんだけど...それって、どういう意味?」
「え!そ、それは...その...」
「それってあんたの聞き間違えなんじゃないの?だって、既にコウ君には
カノン先輩という素敵な彼女がいるわけだし...」
「そ、そうだよね...。そっか、私の聞き間違えなのかな...?」
女子生徒の質問にクーナが答えを口ごもり戸惑っていると、もう1人の
女子生徒が述べる自己完結な答えに、二人の女子生徒が納得する。




