44話・俺が昔を考える
「ったく...結局、あいつは何がやりたかったんだ...」
登校中に俺を奪取した後、しばらくナナと談笑していたのだが、
途中でラールを見つけた途端、俺を放ってラールの方へダッシュして
いきやがった...。
結局、俺はその後1人寂しく登校する羽目に......。
あいつさえ暴走しなければ、朝はカノン先輩とクーナさんの
二人両手に花状態でウハウハ幸せ登校だったのにさ...
ま...しかし、ナナの成長も堪能できたし...今回は大目に見ますか...。
「あ...コウ君、無事に登校できたみたいですね!ナナさんにいきなり
拐われちゃうんだもん...本当、ビックリしましたよ!」
「あ...クーナさん。今、到着ですか?」
机に寝そべって、先程のナナとの会話を頭の中でグルグルと考えていると、
遅れて登校してきたクーナさんが、心配そうな顔をして俺のいる場所へ
近づいてくる。
「しかしナナさんがあんな行動をしてくるなんて...予測不能でしたね。
でも、何がしたいんでしょう...ナナさんは...?」
ナナの不理解な行動に、クーナが首を傾げてそれを考える。
「さあ...正直、あいつの突発な行動は今に始まったわけじゃないから...」
「え...ナナさんって、昔からあんな感じなんですかっ!?」
ナナの事をニガ笑いをこぼし話すコウに対し、クーナがその事実に
目を丸くした顔で仰天している。
「はは...」
本当ナナの奴、変な意味で全くかわらないよな...。
行動は危なっかしい癖に、思考は即決するし...
しかもタチが悪いのは、その持って生まれた天才な能力のせいで
大体の事は切り抜けるから、それに巻き込まれる俺と妹が何度ひどい目に
あったことか...
いや...正確には妹の奴も天才肌だから、割を食うのは俺だけだったな...。
普通人の俺はこの二人のせいで、何度死線を垣間見た事か...垣間見た......
「嗚呼ぁぁっ!嫌な事を色々と思い出してしまったぁぁぁっ!!」
俺は昔の事を...あいつらの事を考え過ぎたせいで、死にかけた数々の記憶が
頭の引き出しからポンポンと飛び出してくると、その思い出したくもない
記憶で悶え苦しむ。
「ど、どうしたんですかコウ君!?いきなりそんな大きな声を出してっ!?」
突如、叫声を荒げるコウにビックリしてしまい、クーナがその目を丸くしている。
「はは...ごめん、ごめん!ちょっと、昔の嫌な記憶を思い出してしまって...」
「昔の嫌な記憶って...ナナさんの記憶ですか?」
うわ...昔のって言ったのに、躊躇なくナナの名前が出てくるのね...
まあ...正解なだけに苦笑しかこぼれないけどさ......。
おくびにもなくナナが悪いと断定してくるクーナさんを見て、俺はあいつの
自業自得の諸行だなと思わず苦笑してしまうのだった。




