41話・俺...強奪される
「こぉぉらぁぁ―――っ!そこの三人っ!私の前で不純異性行為は
許さんと言いましたよねぇぇぇ―――っ!!」
自分を無視して、好き勝手にイチャイチャしているコウ達に、憤怒した
ナナが少し強めに注意してくる。
「ん...?あれ...幼馴染ちゃん、まだここにいたんだ...?」
「ええ、いますけど...!なんです...いちゃ悪いんですかっ!」
わざとらしくそう述べてくるカノンに、眉をピクピクと動かすと
愚痴をこぼす様にナナが文句を吐いてくる。
「いちゃ悪いとか云々より、空気を読め......って感じ?」
カノンがジト目でナナの顔をジィィーと見ながら、呆れ口調を洩らす。
「く、空気をって、どういう意味ですかっ!?」
「ん...わからないの...?私とクーナちゃんと彼氏との語らいを邪魔を
すんじゃない...って...意味かな?」
「じゃ、邪魔っ!?」
やれやれといった表情をこぼしながら述べるカノンのズバリな言葉に、
ド正論を突かれたナナが目を丸くして固まってしまう。
「カ、カノン先輩...いくら本当の事だからって、そんなにズバッと言っちゃ
駄目ですよ!」
クーナが本音の洩れる少し毒のこもった口調で、カノンに注意の言葉を述べる。
「ちょ!本当の事って、クーナちゃん!?」
真面目人間クーナから発されたディス言葉に、ナナの身体が更にピキッと
固まってしまう。
「ひゃっ!?す、すいません!つ、つい...本音がポロリと出ちゃいました!?」
「気にするなクーナちゃん。だって...ここまで言わんと、場の空気を理解できない
KYな御方だし...幼馴染ちゃん...」
思わず本音が出てしまったという表情をこぼすクーナに、横で見ていたカノンが
ニヤリと微笑み、ナイスと言わんばかりのサムズアップをグッと突き出した。
「お、己...二人して言いたい放題言いおって......」
言われ放題のナナが、歯ぎりしをしながら拳をブルブルと震わせて、
無念の言葉を呟く様に吐いている。
そりゃ~私だって、ここで流れる空気が違うと気づいているよ...。
でもそれじゃ、カノン先輩は勿論の事、クーナちゃんにも負けちゃう
じゃんか......
ううん、わかってる...それは私がラール君の言葉に乗った行動の結果だと
言う事は...
だけど...だけどさ、このまま勘違いで進んで行った先に、隙間がなくなるの
だけは嫌だ......。
ウフフ...なら...ならさ...今、私のやる行動は......
そう...その空気を読めない奴の行動を...特と見せてやろうじゃないかっ!
ナナが心でニヤッと笑いを浮かべた瞬間、ゆっくりとコウ達のいる方向へ
目線を向ける。
「ふ...ふふ...そうですね、カノン先輩...。私って、空気が読めませんので...」
そう言うが否やナナがクワッと目を見開いて、自分の両腕をコウ達へ向けて
突き出した...
「だから、こういう事をやらせてもらいますねっ!」
「え...!」
「はわ...!」
「へ......ッ!?」
突き出したナナの腕が俺の顔をバッと強引に引っ張ると、カノン先輩達から
強引に俺を引き離す。
「のわ!ちょ、ナナっ!?いきなり、何をす――――――ッ!?」
突如、やられた事に文句を言おうとする俺だったが、その前にナナの小脇に
抱え込まれ、そのままこの場から脱出するかのようにカノン先輩から離れ、
遠くへ駆けて行くのだった。




