33話・俺のカノン先輩へのやきもち
「まぁ...あの連中の全てが...多数恋人持ちではないけどな...」
「じゃあ、もしかして...その...カ、カノン先輩に取り巻いている
あの連中も?」
俺はカノン先輩にも、取り巻いているファンがいる事を思い出し、
その事をおそるおそると聞いてみる。
「ん...何だ、コウ。私のファンに嫉妬をしているのか...?」
軽く嫉妬を含んだコウの質問に対し、その事がかなり嬉しかったのか、
カノンが少し意地悪をして質問を質問で返す。
「え...い、イヤ...別にそう言うワケでは...ただ...気にな.....ゴニョゴニョ」
「むふふ...もう、そのやきもちする姿...めっちゃ可愛いぞ...このこのっ!」
「だ、だから、違います――――はにゃっ!?」
少しふて腐れた口調な俺に、ニヒヒと微笑んだカノン先輩が自分の
胸元へ俺の顔をギュッと強く抱きしめる。
はわわ...こ、この顔中へ伝わってくる感触...!?
ああはぁ...なんて幸せな柔らかさなんだろう......
突然沸いた幸福と呼べる感触に俺はだらしなく頬を下げ、そして
甘える様に、その身をカノン先輩の胸の中に委ねる。
俺がそんな幸せな感触に浸っていると...
「ちょっと!そそ、そこの二人っ!?な、何をそんなにくっついて
いるんですかっ!」
目の前でいちゃつくコウとカノンに、ナナが目の色を変えて激おこ
してくる。
「何をと言われても...彼女から彼氏へラブな包容をしているだけだが...
何か問題でも?」
「うう...問題...問題が...問題がぁ...ぐぬぬ...!」
速攻でカノンの言葉を否定してやりたいナナだったが、彼女宣言をした
カノン...それを認めるコウ......
そして、一応今は『二人』だけで、イチャイチャしているだけなので
ハレンチとも言えず...結局、言いたい言葉を口にできずに悔しさを
滲ませていた。
「所で幼馴染ちゃん...ちょっと聞きたいのだが...キミは何をしにここへ
来たんだ...?」
カノンが首を傾げて不思議そうな表情を浮かべると、ナナがここにきた
理由を問うてくる。
「そ、それは幼馴染の義務として、寝坊助のコーをお、起こしにきたん
ですよ...!」
それに対し、ナナが一歩退きつつも、負けじとそれに答える。
「おお...それは、それは私の彼氏の為にご苦労様...。ほれ...クーナちゃん、
あなたも幼馴染ちゃんに...お礼の言葉を述べて...」
「あ、はいっ!え、え~と、ナナさん!わ、私の彼氏のコウ君の為に
ありがとうございます。彼女として、是非お礼を言わせて下さい!」
カノンに即されたクーナが照れた姿を見せつつ、何度も頭をペコペコと
下げて、ナナへ感謝の言葉を述べてくる。