03話・俺の幼馴染が告白される
「うん、間違いないラール君だぁ~♪」
ラールを見つけたナナの表情は、まるで素敵な物でも見つけた様な
キラキラ笑顔に変わる。
「じゃ、コー!私はラール君と一緒に学園に行くから、コーも遅れないように
ねぇ~!」
「ああ、わかってるって...」
ナナが俺にそう釘を指すと、上機嫌な表情でラールの元へ駆け出して行った。
ナナが上機嫌で駆けていった相手...『ラール・マクスタ』は、俺が通う、
グランジ学園でナナと共に上位の成績を誇る完璧男子。
女子からの絶大な人気なのは言うまでもなく...それに加え、なんと男子からの
人気も高いという、まさに完全無敵なスーパースターなのだ!
そして...俺の幼馴染、ナナの彼氏でもある...。
あれは1ヶ月くらい前かな...?
ナナが俺に話があるから、私の部屋に来てと言われ、少しドキドキ気分で
行ってみると、そこで待っていたナナの話は俺に取って...
その期待を裏切る話だった...。
ナナの話によると、ラールから放課後、校舎裏に来て欲しいと呼び出されたので
行ってみると、そこで待っていたのは交際の申し込みだったらしい。
「えへへ...それでラール君から、告白を受けたちゃった♪」
...って、顔を赤らめてながら、幸せそうに言ってきた事を、俺は今でも
覚えている...。
それで、ラールの告白の返事をどうしたら良いかと聞いてくるので...
「そ、それは俺が決める事か?それはお前が決めるイベントだと俺は思うぞ?」
...と、俺は窘める様にナナへ述べると、急にナナの奴が怒り出して...
「コーに聞いた私が馬鹿だったよ!もう、コーなんて知らないっ!」
...と、言われて部屋を出されてしまった。
今考えると、あの時の俺があんな言葉を言ったのは、笑顔でラールの事を話す
あいつを見たせいで、軽く...イヤ、かなり嫉妬しちゃったんだろう...。
そう...俺は昔に一度、ナナへ自分の好意をやんわりとではあるが、伝えた事が
ある...。
しかし返ってきたナナからの返事は、よく小説等で聞く様な定番のフレーズ...
「うん!私達はいつまでも『良いお友達だよ!』ズット、ズゥ~ット、仲の良い
『幼馴染でお友達』のねっ!」
...だった。
頬を赤くもせず、照れる事もなく言われたその言葉に...これ以上、何も言えなく
なってしまったのは、言うまでないよな...。
それに反し、あの夜...ラールを語る時には見せていた、頬を赤く染めながら、
照れているナナの表情...
あれを見て、内心負けたという心が大きく膨らんでの、あの返しだった事は
認める所だ...。
だが1つだけわかったのは、俺はこの幼馴染...ナナに振られたんだな...
...という事だ。
そんな告白があった日から何日たった後のだったか...それは忘れちゃったけど、
俺の耳にクラスから聞こえてくる噂の声で、二人が交際を始めたと言う事実を
聞かされた。
女子からは、ちゃんと繋ぎ止めとけや!...っと罵詈雑言を浴び、男子からは同情の
言葉や涙を受けて、今現在に至っている。
しかしナナの奴...あの相談の次の日からも、変わらず普通に俺を起こしにくるから
本当、気がつかなかったぜ...。
「でも、あいつ...彼氏がいるのに何をやっているんだよ...?そして俺もそれを
普通に受け入れるなよ...。はあ、ちょっと情けないよな...俺」
そんな意味不明な行動を取る幼馴染に対して、とっくに吹っ切ったはずのナナに、
未だ依存してしまう情けない自分のその行動不純に対し...
思わず、深い嘆息を洩らすのだった...。




