29話・俺の起こし方の違い
「うん、おはようクーナさん!...て、君も一緒なのかい、クーナさん?」
「はは...実は昨日の帰り道に、カノン先輩から明日の朝、コウ君を出迎えに
行こうって提案されまして...」
「カノン先輩から...?」
カノン先輩達に目を丸くして驚いている俺へ、頬を掻きニガ笑いを
こぼしているクーナさんが、自分達がここにいる理由を説明してくる。
「ん...コウは寝坊助さんと聞いた...。ならば、それを優しく起こして
あげるのが彼女の役目...だから、クーナちゃんと一緒に起こしにきた...ブイ!」
カノンがコウに向けてドヤ顔をすると、腕を突き出しブイサインを決める。
「はは...それはどうもありがとうございます...カノン先輩!」
「イヤイヤ...お礼はいい。さっきも言ったが、これは彼女の勤め!」
カノンがそういい放つと、先程より身体をふんぞり返り、ドヤ顔は
倍に増している。
そっか...彼女の役目か...
うん...何かいいもんだな、この幸せに充たされた感じで起こされる
雰囲気......
なにせ今までは、俺が起きるまで揺らせまくって...起きたら起きたで...
クドクドと続く説教タイム......
そこには優しさもへったくれもなかったからなぁ...
まぁ...それは朝が全く弱い俺が悪いわけだし...それなのに毎日起こしに
来てくるあいつには感謝はしている...
けど......
そろそろ...俺を起こしに来てもらう事を、やめてもらわなきゃいけないな...
そうしなければ、ナナの彼氏であるラールの奴に悪いし......カノン先輩達にも
申し訳が立たない...。
「ど...どうしたんですか、コウ君?そんな神妙な面持ちになって...?」
これからの事を考え、神妙になっていたコウの顔を心配そうにジィィーっと
クーナが見つめてくる。
「あ...も、もしかして...私達がここに来たのが迷惑だったから...?」
「そんな事はないさ!彼女から起こされるなんて、嬉しい以外の気持ちが
あるわけないじゃないか!」
シュンと頭を垂れてくるクーナさんのその姿を見て、慌てた俺は、それを
全力で否定する。
「はぁ...よかった...。いきなり来ちゃったから、少し心配してたんだ...
コウ君が迷惑そうにしてくるんじゃないかって...」
「ん...だから言ったではないか、クーナちゃん。私達の彼氏はそんなに
度量が小さくないから心配するなと!」
安堵の表情を浮かべているクーナに、カノンが自分の事を話すかの様に
コウの度量を誉めてくる。
「それで...私達の事での迷惑表情じゃないというなら...その表情になった
理由はなんだ...?」
「たはは...それはですね...いつも起こしにくるナナの奴で――」
先程、思考していたナナの事をカノン先輩やクーナさんへ説明しようとした
その瞬間、部屋の外からドタドタとこちらへ駆けてくる足音が聞こえてくる。
そして、その足音がドアの前で消えると......
ガチャガチャ......バッタァァァ―――ンッ!!
「おーい、コーッ!もう朝だぞぉぉ~!そろそろ起きなさ―――っ!?」
ドアを豪快に開けてきた俺の幼馴染こと...ナナが、部屋の中にいるカノンと
クーナへ目線がいくと、石化した様に体が固まってしまう。




