28話・俺の耳に目覚めの声
窓を抜けて部屋にさす日射しが暖かい、ある朝......
いつも様に俺を起こそうとする声が耳に聞こえてくる...
「起きろ...お~い、起きるのだ~コウ...!」
ん...んん...だからって身体を揺らすなよ...あれほど脳が揺れるって言...
...って、あれ?ゆ、揺れていない...?
それになんか、いつもと起こし方が違う...?何て言うか、起こし方が
優しいし、声の物腰もやわらかい......
「ん...全然、起きないな...?しょうがない...ここは素敵な彼女さんから、
熱い目覚めの口づけを......んん!」
へ...!め、目覚めの口づけぇ―――っ!?
「あ...コウ、起きた...のか!チッ...残念無念だ...!」
唇に後1センチ手前という所でコウが目を開けた事に、彼女さんが
軽い舌打ちを打って残念がる。
「え...!ええ...!?カ、カノン先輩ッ!?」
「よ!おはよう...我が彼氏、コウよ♪」
「あ...おはようございます!...って、ちょっとカノン先輩!?
そ、そんなに顔を近づけて、一体なにをするおつもりだったので...!?」
さっき、熱い目覚めの口づけとか言ったよな......
も、もしかして、モーニングキスとやらをしてくれるつもりだったのかっ!?
「なにをするって...決まっている...。コウの彼女から...あっつい目覚めの
キスをしてあげようと...思ったのだ♪」
おおお―――っ!や、やっぱりモーニングキスでしたかぁぁ―――っ!
く、くそう...俺は何故...何故ぇ、目を開けてしまったんだ...っ!
空気を読んでくれよ、俺のまぶたさんよぉぉぉ―――っ!!
俺は無念と言わんばかりに、両手で自分のまぶたパシパシと叩き反省させる。
「ん...なんだ、コウ?やっぱり、彼女からのキッスを受けたくなったのか?
それなら...今するか?チュッって...?」
カノンがニヒヒ笑う様に口角を上げると、人差し指を自分の唇にチョンと
当てて、誘惑する様に呟く。
「へひゃっ!?チ、チュ、チュウ...ッ!?」
再び舞い降りたカノン先輩とのキスのチャンスだったが、紳士なスケベの
俺には完全なキャパ越え展開なので......
「そ、それは...その...あの...はわわっ!?」
このように、せっかくカノン先輩から頂いた大胆な申し出に思いっきりと
キョドってしまい、オドオドと慌てる姿を見せてしまうだけだった。
「もう...いい加減にして下さい、カノン先輩!いきなりそんな事を言うから、
コウ君がテンパってるじゃないですか...!」
「はぎゃんっ!?」
唇を少し突き出してキスの構えをしているカノンの頭上に、軽いげんこつが
落ちてきた。
「や、やあ...コウ君、お、おはようございます...!」
カノンを後ろから恥ずかしそうに顔を赤くさせているクーナが、コウへ朝の
挨拶を交わしてくる。




