233話・俺の帰還後のお話 その6
「く、待ちなさ―――くそ、あいつらの気配がもう消えた......っ!?
な、なんてスピードで飛んでいくんですか、あいつらはっ!」
逃げて行く三人組の方向を見ながら、ユユナは無念の舌打ちを軽く打つ。
そんなナユユに、
「えっと、キミ達は皇女様の関係者......だよね?」
先程この洞窟内に舞い込んできたエドワードが、恐る恐ると話しかける。
「だ、誰ですか、あなたは!?い、いつからそこにいたのですか!?」
すると、声をかけられ、やっとエドワードの存在に気づいたナユユが、
目を大きく見開きビックリしながら、エドワードのいる方向に顔を向ける。
「いやいや!さっきから普通にいましたけど!?敵のリーダーらしき黒騎士と
喋ってたましたけど!?俺って存在感だけはあると自負していんだけどなぁ。
これでも一応学園の二年トップエースなんだよ、俺?」
今の今まで自分に気づいていなかったというナユユに、エドワードも
ナユユ同様、目を大きく見開いてビックリしてしまう。
「おい、エドワード......だったか?」
「お、キミはちゃんと気づいてくれてたみたいだね♪」
「オレをそこの魔法馬鹿と一緒にするな。戦闘中の事は大体は把握している!」
「ちょ!?魔法馬鹿とはなんですか!それいうなら、あなただって剣馬鹿では
ありませんか!」
「な、なんだとぉぉおっ!」
「なんですのっ!」
ナユユとグラニアが、目線から火花をバチバチと散らして睨み合う。
「まぁまぁ。ケンカはそこまでにしてさ、今の状況を報告をしに帰った方が
いいんじゃないのかな?」
「そ、そうですわね。ゴブリンキングとクィーンの魔石の回収が間に合わな
かった事を伝えないと......ですね?」
「魔石の回収?もしかしてキミ達って、ゴブリンキングとクィーンの魔石回収が
目的だったのかい?」
「これは国家機密ですので、他国の貴方に教える義理も筋合いもありませんね!」
「それでも聞きたいというのであれば、それ相応の対応をさせてもらうぞ!」
グラニアがそう言うと、鞘から静かに剣を引き抜いてエドワードに向かって
身構える!
「ちょっと待って待って!?だ、大丈夫だって!そんなに凄まなくて無理には
聞かないってばぁ!?いざこざに首を突っ込む興味も勇気も俺にはないしねぇ♪
そんじゃ、キミに斬り刻まれる前に、俺はこの辺で失礼させてもらうとしますか。
バァハッハァ~~イ♪」
エドワードがナユユ達に敬礼をビシッと決めた後、ダッシュするかの勢いにて
洞窟を足早にて去って行った。
「な、何なの、あいつ。トップエースの癖に何かノリが軽いわね......まぁいいわ。
失敗したとはいえ、取り敢えず、ことは済んだわけですし、わたくし達もそろそろ
帰りましょうか、グラニア!」
「了解だ。いち早く帰還して、この事をロイエ様に報告しないといけないしな......」
「ハァ~ロイエ様、失敗したって聞いたら怒るでしょうね......」
「だろうな。これは手痛い失敗だからな......それによって予定していた救出作戦に
大きな支障が出てしまうほどのな......」
「......ゆっくり帰る?」
「......だな!」
ナユユとグラニアは、帰ったら皇女様から怒られるのが目に見えているので、
現実逃避と言わんばかりに、ゆっくり帰る事にした。
―――ナユユ達のいた洞窟から少し離れた森の中。
「ふう...あんなイベント目白押しに巻き込まれるとは......ホント、ついて
いないな......」
しかし予想以上に事は動いているんだな。
「正直、これ以上俺をお前ら事情に巻き込まないでくれと言いたいけど、
多分そうもいかないんだろうな......」
やれやれ、マジでトップエースの座を降りよっかな?
俺はのんびりした学園生活を満喫したんだけどなぁ......。
「ハァ。さて...面倒だけど、この事を学園長に報告しに帰るとしますか。
正直黙っていたいけど、後々もっと面倒な事になりそうだしなぁ......」
エドワードが軽く嘆息を吐くと、さっき洞窟内で起きていた出来事を
伝えべく、エドワードは学園へと帰って行く。




