231話・俺の帰還後のお話 その4
「やれやれ...せっかく忠告を差し上げたっていうのに...」
大きな鎌を装備したアルテミがニヤリと口角をあげると、返り討ちに
してやると言わんばかりにギフト技を発動させる体勢へと入る。
そして頭上に顔を向け、
「やはりあなたアマアマですわね。動きの限定されるジャンプ攻撃を繰り
出すだなんて。それはカウンターを食らわせて下さいと言っているような
ものですよっ!」
ジャンプ攻撃にて自分を斬り込もうとしてくる、銀色の鎧少女を迎え討つ!
『さぁ神鎌セティーヌサイスよ!我の敵を一閃せよ!漆黒斬交刃ッ!』
大きな鎌を両手に持ち、そして頭上高く抱え上げて水平に構えた後、
ギフト技...漆黒斬交刃を発動させ、鎌を力強く横に振ると、漆黒の弧月状の
大きな刃が唸りを上げて、ストレートヘアの少女の首を叩き落とそうと
襲いかかってっていく!
「わ、技の発動が早過ぎる!これは...やられる!?」
アルテミが放った漆黒の刃が、ストレートヘアの少女の首を刈ろうと
迫ったその時、
『炎竜・華連斬ッ!』
それを阻止する様に、どこからともなく飛んできた炎の斬劇が漆黒の刃を
相殺して打ち消した!
「こ、この攻撃は...」
「やれやれ...三年生達の目から逃れる為に入った洞窟だっていうのに、まさか
そこが大当たりだったなんてよ......」
炎の様な真っ赤な髪をポリポリと掻きながら、参ったと言わんばかりの表情を
浮かべて、謎の男性が洞窟の奥から歩いてくる。
「この練度された魔力の込もった炎の斬撃...やはり、二年男子トップエースの
『エドワード・ファンクーヴァ』でしたか?」
アルテミ達の仲間、黒い鎧を着た少年が洞窟に入ってきた真っ赤な髪色をした
男性を見てエドワードと気づく。
「おやおや?そこのカッコいい黒い鎧を着たキミ、オレの事をよく知ってたね?」
「それは当然ですよ。貴方は三大学園では有名な御方ですからねぇ。何せ、
レアジョブのひとつである『炎の聖戦士』の持ち主であり、更に一年、二年と
縦続けにトップエースの座に君臨する、学園の誇る超天才様ですからね!」
「いやいや、カノンならいざ知らず、オレはそこまで大層に言われる程の器でも
ないってば。真面目が大嫌いな性格で目立つのも戦闘も大嫌い。ホントに気弱な
平和主義者なのよ、これがさ♪」
「ふふ、ご謙遜を...」
「本当だってば!でもそこまでオレの事に詳しいって事はさ、ひょっとして
キミ……グランジ学園の生徒だったりする?」
「ふふ...さて、どうでしょうね?」
「だったら、他の三大学園の生徒?はたまた三大学園の関係者とかかい?」
「ふふ。それもノーコメントで♪」
エドワードの問いに対し、黒い鎧をきた少年は茶を濁した、どれとも
取れない返答を返していく。
ほほう。あせる事もなく、言葉を上手く躱すか。
「それにしてもキミってば、そのダークイメージたっぷりの黒い鎧に反して、
ちっとも似合わない悠長なる喋り方をするよねぇ~♪」
「ふふ...性分ですので♪それでどうしますか、エドワードさん?貴方もそちらに
いらっしゃるお嬢さん達の様に、僕らと闘いますか?」
「いやいや闘わないよ。さっきの攻撃はそちらのお嬢さんが大ピンチだったら
助けただけだ。流石に見捨てられはしないのでね♪」
エドワードはニコッと表情を崩さず、更に話を続ける。
「それにオレの任務はスタンピードの原因とされるゴブリンキングとクィーンの
捜索だから、基本そういうのにはノータッチでいきたいの。正直その他お仕事なんて
やりたくないです。だって面倒くさいじゃん♪」
「なら、僕らがここを去っても何も問題はありませんよね?」
「おう、全く問題ナッシングだぜ♪」
エドワードはニカッと満面の笑みを浮かべ、黒い鎧の少年に向けてサムズアップを
ビシッと突き出す。




