207話・俺の妹の試行錯誤
ふふ...しかしナナさんの事で悩んでいると、幼少の頃、
ナナさんと毎日の様に繰り広げていた、あのコウにぃ争奪戦の
懐かしい記憶が脳裏に浮かんできますね。
そう...あの時も......
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『もう!またですか、ナナさん!また私の隙をついて、こそこそと
コウにぃを連れ出してぇぇっ!』
『またかは私の言葉だよ、ミル!せっかくコーとのデートだっていうのに、
お邪魔虫が来たら台無しじゃないかっ!』
『ふふ、それは間違いな考えですよ、ナナさん。コウにぃの隣を歩くのは
コウにぃの唯一無比な女性...つまり私だけなんです!従って、そのデートは
私のものですっ!』
『ハアァ!?何よ、その意味のわからない自分理論は!?』
『...と、いうわけで、後は私が代わりにデートをいたしますから、ナナさんは
ここで御退場をお願いしますね!』
『何であんたにデートを譲らなきゃいけ......って、おい、ミルさん!?
さらっとコーの腕に身体全体で抱きつくなぁ!うう。わ、私だってやってやる、
ええぇぇいっ!』
『ちょっと、ナナさん!その無駄に大きい二つの脂肪をコウにぃの腕に
押しつけないで下さいっ!こら、コウにぃもデレデレしないっ!』
『ハァ~なぁ、お前達...もうちょっと、仲良くできないのか?』
「「勿論、できませんねっ!!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
はは...そうそう、こんな事もありましたよね......。
確かにナナさんとの競い合いは、ムカつく事も多々ありましたけど、
楽しい事もまた沢山ありました。
そうです...だから、こんな訳のわからない理由でライバルをリタイアだなんて、
私は絶対に認めませんからね。
だから、ナナさん。私は情けの情けをかけて、あなたに助け船を出します!
目の前で訳もわからず、もがき苦しんでいる長き付き合いのライバルを見て、
ミルが我慢できず、ひと肌脱いやると...そう心の中で決意を固める。
さて...助けるとなると、まずはあのアイテムを作らないといけませんか?
う~む。少々勿体ない気もしますが、あの素材たちを使ってあのアイテムを
作り...そして次はそうね...あの素材とあの素材を混ぜて...
あ、そうそう!あの素材も必要ですから、どこかで手に入れないと
いけませんね。
この学園の購買部か、町の道具屋さんでその素材が売っていれば
いいのですが...
まぁ、もしないのであれば、ロイエ当たりにでも頼むとしますか。
あの子の”立場“を利用すれば、難しい素材も容易く手に入れる事が
できるでしょうしねぇ...うふふ。
後は...この武器も必要かな?
ミルは右手に持っている武器をジィィーと見る。
やれやれ...せっかく希少な素材をコツコツ集めて、やっとこ完成させた
武器だったんですが...仕方がありません。
ずっとコウにぃを奪いあった私のライバルを、こんな意図もせずの横やり如きで
叩き折られるのは......
少々、いえ...かなり腹が立つ所ですよ!
だから、そんな腐れた横やりを潰せるなら、こんな武器なんてお安いものですよ、
ええ!お安いものですわっ!
何が原因なのかは知りませんが、見てなさいよ!私の持てる全ての力を以て、
意地でもナナさんにおこっている変化の正体を必ず突き止め...
そして完全にこの世から消し去ってあげますからっ!
ナナをこんな目に合わせている正体のわからないもの対して、ミルは沸々と
怒りが込み上がってくると、そいつは絶対に潰すと心に誓う。
そしてミルは憤怒している気持ちを落ち着かせる為、息をスッと吸って、
その吸った息を静かに吐くと、顔をナナに向けてこう言うのだ......
「ねぇ、ナナさん。もし、私に良い解決方法があると言ったら......乗りますか?」




